2014年8月2日土曜日
大岩旅人木「六十九回また巡りくる爆忌くる」・・・
「藍生」8月号は特集「原爆忌」である。いまどきと言っては申し訳ないが、その愚直な編集に敬意を表したい。俳句関係の総合誌は今や特集はおろか原爆忌に関する記事が目に触れることがないと、言っていいくらいの体たらくである。
もし、それら原爆忌の句を読み、そこに非核への意志を明らかにすることが、単に愚かな人間主義だと言うのであれば、それが、たとえ偽善の人間主義であってもかまいはしないと、大きく開き直ってもいいと思う。
世界に知恵をもった人間こそが戦争の悲惨をくりかえすのだとしたら、それこそおろか極まりないことだ、と言わなければならない。為政者にこそ愚直な人間主義を貫く理想がなければならない。
「藍生」の会員の方々であろうと思われるが、この「原爆忌」特集に精一杯応えられているのには胸を打たれる。
そのエッセイは、たまたまその日(原爆が落ちた日)に、体調を崩して、学校をやすんだり、偶然にその直撃をわずかに免れ、生き残ることができたといい、ために多くの友人は命を落としたという慙愧を抱えて生きて来られたことがうかがえる。
六十九回また巡りくる爆忌くる 大岩旅人木
夏くれば想ひ出さるるきのこ雲 大岩 茜
命とは一握の灰原爆忌 髙橋冨久子
友らひとりも棺なし爆忌くる 〃
確かに今年は69回目の原爆の日が、もうすぐやってくる。思い出したくない悲惨さはいまも暗く沈んでいるのだ。
核の冬天知る地知る海ぞ知る 高屋窓秋
地平より原爆に照らされたき日 渡邊白泉
墨の絵となりゆく松や原爆忌 原 裕
湾曲し火傷し爆心地のマラソン 金子兜太
片仮名に書くヒロシマの忌なりけり 新延 拳
人間の息に囲まれ原爆忌 竹岡一郎
東京の第45回原爆忌俳句大会は今年も8月10日に専売ホールで行われる。
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