2015年7月4日土曜日
曾根毅「啞蟬も天のうちなり震えおり」(『花修』)・・・
曾根毅第一句集『花修』(深夜叢書社)は装幀(高林昭太)・装画(奥原しんこ)の美しい句集である。集名の由来は、世阿弥の『風姿花伝』からとあり、彼の師である鈴木六林男主宰の「花曜」の修学期間への思いもあるという。
第4回芝不器男新人賞受賞作も収められている。従って、栞文には芝不器男新人賞の選考委員各氏の稿が寄せられている。西村我尼吾は「本句集は人類が経験した震災に対する精神史の一部を占めるものでる」と述べている。他には大石悦子・坪内稔典・対馬康子・城戸朱理・齋藤愼爾。
曾根毅は昭和49年、香川県生まれ。LOTUS同人。平成23年、第23回現代俳句新人賞佳作奨励賞受賞と履歴にあったが、確かこの時、愚生も現代俳句協会の新人賞の選考委員を務めていたように記憶している。無記名で行われる選考は、もちろん、その決定後に氏名が係りから知らされる。
その時、3・11に仙台港に出張で来ていたという曾根毅は、震災直後の残された応募期間にその句作品を創ったのであろう。震災句を巡って選考委員の間で、いくばくかの論議がされた。そして、現代俳句協会選考委員としては、新人賞としては初めて受賞作なしを決定したときであったと思う。しかし、現俳協として、まったく何もしないのは応募者の今後の励みにもならない、ということで、特別授賞の佳作奨励賞を考えた。応募者の中での相対的な評価では実質的に新人賞相当である。
くちびるを花びらとする溺死かな 毅
憲法と並んでおりし蝸牛
夕ぐれのバスに残りし春の泥
水吸うて水の上なる桜かな
ロゴスから零れ落ちたる柿の種
明日になく今日ありしもの寒卵
羽抜鶏からだを熱くしていたり
夏の蝶沈む力を残したる
三界のいずれを選ぶ油照り
祈りとは折れるに任せたる葦か
ノウゼン↑
くちびるを花びらとする溺死かな (×しる →○する)
返信削除羽抜鶏からだを熱くしていたり (×羽抜け鶏 →○羽抜鶏)
匿名様 ご指摘の箇所は、大井さんご本人が修整されたようで、コメントが掲載されないままとなっていました。ご指摘ありがとうございました。(北川美美)
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