2015年8月26日水曜日

鈴木純一「戰爭をなくす戰爭をみなへし」(「LOTUS」第31号)・・・



  鈴木純一の句は特異でありながら、その置かれている言葉の秩序は正当に、実に伝統的である(読者への伝達性を担保している)。
 掲出の句「戰爭をなくす戰爭をみなえし」も表記は円形である(つまり、どこを起点にして読もうと読者の自由である。愚生は掲出句のように読んだまでだ)。
他にも、

    あはれみ 【憐憫】 命が限りなく無限に近づいた
               時、それが風化となす角度。     純一 
     
 といった句もある。あるいは、
 
    持たせやるほたる袋に二つ三つ

 以上、表記の参考までにと思い、写真上に収めた。その鈴木純一の句集『平成物語 オノゴロ』(邑書林)について今泉康弘は「『BALSE』と共に、もっと高く評価されるべき句集である」と「LOTUS」作品評(第30号より)で述べている。

 今号の「LOTUS」の注目は、もう一つ、発行人・酒巻英一郎の三行書俳句が特別作品で巻頭を飾っていることだ。現在、多行の俳句を書く俳人はごく少数であるが、それでもその中で、最初から最後まで三行を貫徹してきた俳人はいないと思われる。
 高柳重信の到達した多行俳句が4行であるとすれば(高柳重信の4行形式の継承者はけっこういる)、それと対峙しながら(一行の俳句も含めて)、飽くなき三行書きを貫ぬき、書き続けてきたのが酒巻英一郎である。
 いくつかを挙げておこう。

   いしばしを
   しばしひろはば
   かきつばた            英一郎

   嗅ぎあてて
   帰する春夜の
   陰を噛む

   おほでまり
   何れ何くに
   おのれなし

   鶴翼や
   後手に廻りて
   花の陣

   黒百合の
   直目に萼を
   留めおかむ





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