2015年9月1日火曜日
茨木和生「戦争を知りゐる樹々も山桜」(『真鳥』)・・・
茨木和生句集『真鳥』(角川書店)には、右城暮石の弟子らしく、暮石忌の句がいくつかある。1990年、茨木和生が右城暮石の「運河」を継承してからもすでに25年の歳月が流れている。師の暮石が松瀬青々ゆずりの自然讃仰一筋に歩いたように、茨木和生もまた、自然讃仰の道を、ますます平明な句作りとともに歩いているように思える。それを「あとがきに」、
ますます自然をありがたいものと思うようになった。しかし、このところ自然は人間の手によって荒らされていることを嘆かないわけにはいかない。(中略)
日本の自然は本当に美しいのかと問い直してみたい思いでいっぱいである。東日本大震災と原子力発電所の事故は言うまでもない。山に目をやれば、楢枯れ現象は留まるところがない。杉檜の植林も手入のされない山が増え続け、山の竹林化のスピードは進むばかりである。自然を心底ありがたいと思って句を詠める日の来ることに微力を尽くしたい。
ところで、余談だが、茨木和生は、攝津幸彦の高校時代の先生だった。確か島田牙城もそうだったと思う。また、早逝した安土多架志もそうだったのではなかろうか。ともあれ、以下にいくつか暮石関連の句と愚生好みの句を挙げておこう。
竜天に登りしあとの雲の色 和生
下野国平畑静塔の墓に詣づ
墓地に立つ月下の俘虜の句碑も灼く
一睡のあとに校正暮石の忌
ここのこの暮石も見たる吾亦紅
ひひと鳴く声のあはれも麦鶉
吉野山中にて
戦争を知りゐる樹々も山桜
右城暮石先生の山墓の道
吉野よりここの一樹の山桜
高知県長岡郡本山町では
三日間雨量千ミリ暮石の忌
ちなみに暮石の忌日は、8月9日である。
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