2015年9月16日水曜日

佃悦夫「鳴る神と成り余るものともに鳴る」(『赤ちゃん』)・・・



佃悦夫、昭和9年、静岡県伊東市生まれ、81歳。重ねた年齢のイメージからすると、変わった句集名であると思う。その『赤ちゃん』(現俳句協会)について、「あとがき」に記している。

 句集名『赤ちゃん』は筆者にとって、赤ちゃんの存在を鏡のように己れの意識としている只今の謂でもある。

 集中の赤ちゃんは、

   柳絮浴ぶ赤ん坊を原野といえり             悦夫
   赤ちゃんの螺旋構造霜柱
   満月は生き体であり赤ん坊              
   赤ん坊とたんぽぽの絮スパークす
   赤ん坊いきなり初日鷲掴み
   霜柱歯牙瞭らかな赤ん坊
   赤ん坊真昼の鵙と大笑い
   
   
佃悦夫は昭和37年「海程」2号より入会し、同人。「海程」一筋の人である。
愚生は、昨年まで、現代俳句協会新人賞選考委員を務めたが、その時、お世話になった大先輩である。昭和51年第23回現代俳句協会賞を受賞している。

  ウサギ飼い身に清潔な水たまる
  新鮮なさすらいに似て草刈り場

集中の前書きのある句は捨てがたい。
    
      母よ(三句)
  スイトンを作りし乳房涸れ尽くす 
  白息をしつ割烹着飛び去りぬ
  枯菊の紛れし骨をひろいけり

以下に興味を抱いた句をいくつか挙げさせていただく。

  パラソルを一〇八回転しても此岸
  冬の山熟睡児は羽納め切り
  ながむしの屍無限大記号して
  外されて月光とあそぶよだれ掛
  あめんぼうという水面の過客かな
  大寒や児は跳縄に縛されて
  ずぶ濡れて案山子は輪廻の途次である 




                                               ハナニラ↑


0 件のコメント:

コメントを投稿