2016年4月13日水曜日
大輪靖宏「抜け出せぬ悪女のごとき春炬燵」(『海に立つ虹』)・・・
大輪靖宏第4句集『海に立つ虹』(文學の森)の句集名は、集中の10句連作から採られている。その冒頭の句は、
海に立つ虹くぐらむと巨船行く 靖宏
である。大輪靖宏は「あとがき中のあとがき」に言う。
私は俳句に関しては師についたことがない。結社に所属したことが一度もないのだ。六十歳を過ぎるまでは近世文学(江戸時代文学)の研究者、教員として行動してきて、句作は行わなかった。師がいないのだから自分で句会を作ることになり、上智その他の学生たちと句会を始めたのが上智句会であり、鎌倉女子大学公開講座での受講者を中心に句会を作ったのが『輪』である。(中略)
そのほか私が俳句の上で関わっているのは、三田俳句丘の会、ソフィア俳句会である。そして、私は伝統俳句協会に所属しているので、協会で行われる種々の句会にも参加している。師を持たないにしては句友に恵まれ、俳句を楽しむ機会も多い。
つまり、師がいないので、必然的に独学で切り開いた大輪靖宏の俳句観について宣明しているのが、「巻末」に書かれた「ささやかな主張ーあとがきに代えて」なのである。それは満八十歳を迎える記念の上梓とは言いながら、現在、弟子ともいうべき多くの俳句の仲間が膝下に集うようになり、自身の俳句観を披歴して、俳句の目指すべきところ、旗色を鮮明にしておかなければならない、という意思でもある。
ともあれ、いくつかの句を以下に挙げて、八十歳をお祝いし、さらなるご健勝を祈念したい。
事なすに人生短か小夜時雨
UFOを見たと子の言ふ星月夜
鎌倉は梅の盛りや実朝忌
抜け出せぬ悪女のごとき春炬燵
鎌倉は谷戸から海へほととぎす
少年の挫折八月十五日
呑み足りぬ気持ややあり春の宵
懐かしき人夢に逢ふ昼寝かな
台風は戦争よりもましと婆
鶴飛翔無限の空にある希望
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