不思議と言えば不思議な句集である。野間幸恵第三句集『WATER WAX』(あざみエージェント)、言葉の関係性があまりに自由に飛躍するので、愚生には目もくらむばかりでなかなか言葉の像が結ばれてこない、と正直に告白しておこう。そのあたりのわけは、久々に彼の文に接することが出来て愚生は嬉しいのだが、序文の筑網耕平、「あとがき」と記されているが跋文の柳本々々にまかせよう。
筑網浩平は言う。
野間幸恵は異色な俳句作家である。句集名に揃えた言い方をすれば、Haiku Creator とでも呼ぶことになろうか。むしろこの言葉の方がしっくりする。
柳本々々は、
煮こごりのなか正倉院正倉
ワックスがけするように、液状化した言語で、世界の事物を形状化する場所。水と言語がかえず往還しつづける場所。「煮こごりのなか」「正倉院正倉」のように水というメディアを介して世界の事物が言語=俳句パッケージされる場所。
それが、水の工房だった。そこからこれらの句は滔々と生みだされた。
そうなのだ。
すべては水の工房だった。
と結んでいる。野間幸恵の不思議なところだ。
いくつかの句を以下に紹介する。
鳥の字をほどく春は昔から 幸恵
犀がゐるいる日曜日から出られない
ポタージュは謎が多くて完成よ
うっとりとアンモナイトを遅れるか
かぐわしい数式だろう梨ひとつ
この世でもあの世でもなく耳の水
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