小町圭第三句集名『一億円』(東京四季出版)は、集中の次の句から、
一億円金魚を作ろうと思う 圭
句集名も変わっているが、収録されている句も、少し変わっている句が多い。それは、天性のものか、はたまた、意識的に滑稽を狙っているのか、にわかには定めがたい。「序」に代えて」の前田吐実男は以下のように指摘している。
現実では不可能な事でも俳句の世界では可能になる。だが、それがまるっきり嘘っぱちでは確かにそんな馬鹿なと誰も相手にしてくれないが、圭さんの嘘にはユーモアと実がある。そこを何処まで読めるかが読み手も試されているのである。虚実皮膜の間ではなく虚実自在(傍点あり・・・・)
という新しい境地を切り開いた一冊の句集がここにある。
しかしながら、この道は、どうにも現代俳句の傍流にならざるを得ないという印象をぬぐい去れない。ゆえにたまに通俗に堕すときもある。ただ、それだけに困難な道を歩いている小町圭といってよいだろう。彼女の第一句集名『鬼は内』にもその片鱗はある。
ともあれ、いくつかの句を以下に紹介しておこう。
老鶯が延命料を急かすなり
蛇穴を出て人間は穴風呂へ
こきくるくるくれこい春よ来い
舟虫が戦艦三笠塗装中
人死して家が壊され霜柱
夕焼や只今父は湯灌中
湯たんぽは新婚の日のあなたです
ゲリラ豪雨へ溺れてゆくよ終電車
秋の山そろそろ猿に戻るかな
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