2016年8月5日金曜日
山田弘子「モンローの手型に落としたる嚔(くさめ)」(『私の俳句入門』)・・・
国光六四三著『私の俳句入門』(文學の森)は、「俳句鑑賞」「俳諧小説」「俳句評論」の三部構成だが、もっとも説得力に富んでいる部は、山田弘子の俳句を評している「平明と流行」の部であろう。
山田弘子(1934~2010)は兵庫県生まれ、「円虹」を主宰し、その結社誌は現在、娘の山田佳乃が継承している。
亡くなったのは6年前、愚生には、元気盛りに急逝された印象が深い。
掲句の「モンロ-の手型に落としたる嚔(くさめ」に、著者は、以下のように記している。
ハリウッドの映画館で、敷石にはめ込まれた映画スターの手型や靴型を見たときの即興句である。セックスシンボルと云われた女優マリリン・モンローと、くしゃみの取合せの落差が、なんとも云えず可笑しい。
別の部だが、「子規の革新・虚子の伝統」の項で、虚子「独り句の推敲をして遅き日を」の大谷句仏への追悼句が遺作となった経緯を、以下のように述べるときに著者の批評眼が垣間見える。
虚子は有季・定型のきびしい制約のもと、一貫して「平明にして余韻ある俳句」を求めつづけました。ただし、「客観写生」「花鳥諷詠」という二つの指導語は、俳句が平板な瑣末主義に陥る危険性を孕んでいました。すなわち、季題季語を育んできた人々の生活や心情を忘れた、自然界への逃避です。
国光六四三(くにみつむしみ)、1957年兵庫県生まれ。
以下に著書に引用された山田弘子の句からいくつかを記しておこう。
主婦にある自由の時間秋灯下 弘子
霜の夜の君が攫ひに来はせぬか
蕗の薹みどり何枚着てゐるか
円虹をもて六甲の春意とす
パンジーのあなたの好きな色はどれ
居候らしく草取などもして
みよし野の花の残心辿らばや
眼の翡翠のこし蟷螂死にゆくか
ありがとうございます。引用していただいた一文は何度も推敲したところです。大井さんの読みの深さ、速さに驚きました。
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