高野ムツオ第6句集『片翅』(邑書林・小熊座叢書102番)。「あとがき」に、
本集は『萬の翅』に続く私の第六句集で、平成二十四年(二〇一二)春から平成二十八年(二〇一六)春までの四年間の作品より三百九十五句を収めた。(中略)
七十歳を迎えるにあたって一区切りをつけておきたいと思ったのである。
水晶の原石のように手触りは粗くとも深い透明度を蔵し持った言葉を掘り当てたいとの願いは強まる一方だ。
と記している。高野ムツオは、愚生にとって、早くより、遠望、期待の作家であった。橋本七尾子が仙台に移り住んだのを機に、一時期、攝津幸彦、池田澄子を含め、佐藤きみこ、渡辺誠一郎等「小熊座」の方々の尽力によって、「そして」という小冊子を出していた時期がある。最近は超多忙の様子でいささか按じられる。攝津幸彦と同年の生まれだから、攝津幸彦が生きていれば、今年、古稀(70歳)を迎えていたことになる。そういう愚生も来年はそうだ。人生長いようで、やはり短いという思いがしきりにする。
句集名は、
福島は蝶の片翅霜の夜
の句からだろう。ともあれ、本句集よりいくつかを挙げておきたい。
揺れてこそ此の世の大地去年今年 ムツオ
紅涙は誰のにも見えず寒の雨
冬眠のままの死もあり漣す
ことごとく我らを睨み冬の星
花万朶被曝させたる我らにも
氷りて融けさらに氷りて光りなす
鶴万羽数えて人も滅ぶなり
弟のぎょろ目も老いぬまた雪か
生者こそ行方不明や野のすみれ
踏むたびに眥裂きて犬ふぐり
骨となる炎立ちたり花の奥
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