2017年4月16日日曜日

井上白文地「我講義軍靴の音にたゝかれたり」(「信濃毎日新聞4月12日より」)・・



「信濃毎日新聞、4月12日」のデータをマブソン青眼が送ってくれた。それには、

 俳人・比較文学者のマブソン・青眼さん(48)=長野市=ら有志が、戦時下に弾圧された俳人たちの名を刻む「昭和俳句弾圧事件記念碑」を建てる運動をはじめた。
上田市の戦没画学生慰霊美術館「無言館」周辺が候補地に挙がっている。マブソンさんは「犠牲となった若者たちの名誉回復と慰霊をしたい。今こそ言論、表現、思想の自由が奪われた歴史に学ぶ必要がある」と語っている。

とあった。3人の筆頭呼びかけ人は、マブソン青眼、金子兜太、窪島誠一郎である。碑には弾圧を受けた十数人の俳人の句が刻まれるという。例えば、秋元不死男「降る雪に胸飾られて捕へらる」、栗林一石路「戦争をやめろと叫べない叫びをあげている舞台」、渡辺白泉「銃後といふ不思議な町を丘で見た」など。



ところで、慰霊という言葉で思い出したのが、添田馨『天皇陛下〈8・8ビデオメッセージ〉の真実』(不知火書房・1200円)である。読みやすく、厚くない本なので、是非読んでもらいたい本だ(図書館ででも借りてね・・)。

 今上天皇がこれまでに執り行った「象徴の務め」のなかで、その本質が最も露わにされたのが第二次大戦の戦没者に対する慰霊行為である。今上天皇は、沖縄戦終結の日、広島原爆の日、長崎原爆の日、そして終戦記念日を日本人として決して忘れてはならない四つの日だと過去に述べている。そして実際に、広島・長崎や沖縄への慰霊訪問を実行に移して来た。(中略)
戦争の死者を普遍的に哀悼するという指針をみずからの行為に与え、過去の激戦地へと実際に赴くという形成的な過程のなかで、新たに生み出されたこの主体は、これまで〈象徴〉に過ぎなかった実体なき没主体を、〈象徴存在〉という超越的な境位にまで押し上げたのである。

そして添田馨は言う。

 だが、メッセージを隅々まで読んでも、天皇は自分の「生前退位」のことに直接触れてはいない。むしろ天皇は象徴としての務めを「全身全霊」で全うしなければならないこと。また、そのためには摂政ではだめなのだと言っているのである。ここには明らかに〈8・8ビデオメッセージ〉が孕む真実の意図の、マスコミによる隠蔽操作=すり替えが働いているのだ。

さらに、巻尾では「有識者会議」について

天皇陛下自らが憲法規定に抵触する寸前の大きなリスクを犯してまで、個人としてのお気持ちを全国民に向かって表明するという、この前代未聞の大事件に対するこれが安倍政権の非道な仕打ちに他ならない。私たちはこのことに対して、もっともっと怒りの声をあげていかなくてはならない。そして、みぎひだり(・・・・・)関係なく、真に国民的な議論につながる建設的な意見表明の実績を、かたちにとらわれず積み重ねていく必要があるのだ。私たちの”公共(パブリック)”がいま激しく問われている。

と述べている。それは添田も言うように、今上天皇こそは、現行憲法下で「象徴」を自ら問いながら生きた唯一の人だからである。その「象徴存在」を全うするのだ、ということはとりもなおさず、現行憲法の維持を主張していることでもある。自民党・日本国憲法改正草案(平成24年4月27日決定)には、「第一章 天皇 (天皇)第一条 天皇は、日本国の元首であり、・・・」と元首が冒頭に来る。もちろん、現行憲法は「第一条 天皇は日本国の象徴であり・・・」と続くのである。




 

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