2017年5月8日月曜日
若林波留美「春の虹銃眼からも見えますか」(『霜柱』)・・
若林波留美第5句集『霜柱』(東京四季出版)の集名は、
地の鹽に遭ふまで伸びる霜柱 波留美
の句に因む。「あとがき」には以下のように記されている。
『霜柱』の題は、拙句の一部から採りました。日本人の美意識の底には「無常観」があり、花吹雪や紅葉が代表的ですが、朝日に溶ける霜柱もそれを感じます。厳寒の土を割つて伸び、人に踏まれ、陽が昇ると煌いて消えて行く、その姿が好きです。晩年が近付いてゐる私に、ふさわしい題かと思つております。
また、「紫」主宰の山﨑十生によると、
若林波留美は、「紫」に於いても五本の指に入る俳歴がある。「紫」の主宰であった関口比良男に師事したのが、昭和三十一年であるから、かれこれ六十年の俳歴ということになる。
という。また、
巧い作品よりも「強い(こわい)作品」の書き手として、若林波留美は、今日の俳句の世界で屹立していいる「信じられる」俳人といえよう。
と称賛を惜しまない。ともあれ、その手強い作品の中から、いくつか愚生好みの句を挙げておきたい。
おほぞらの順(まつろ)ふまでに獨樂澄めり
遠心分離されしは笑ひ涙かな
八方が見えて回転椅子孤独
冬林檎凛然と桂信子逝く
氷点は神の体温雪きらめく
口閉ぢし屍(かばね)のあらず空襲忌
ことば無きものへ原爆忌の驟雨
折鶴のはじめは平ら敗戦忌
天高き日なり上野に象が着く
若林波留美(わかばやし・はるみ)昭和12年、埼玉県生まれ。
*閑話休題・・・
愚生の勤務先に回覧されたものがあった。
「弾道ミサイル落下時の行動について」(上掲写真)だ。
愚生がまだ体験したことがないことのシュミレーションが記されたあった。
〇屋外いる場合→できる限り頑丈な建物や地下街などに避難する。
〇建物がない場合→物陰に身を隠すか、地面に臥せて頭部を守る。
〇屋内にいる場合→窓から離れるか、窓のない部屋に移動する。
なぜ、そうした行動をとる必要があるのか、についても答えが書いてあった。
いわば、有事のときの対応だが、府中市からのお知らせです、とあったので、皆さんご存知なのだろうか?と思ったのだ。愚生は、新聞、テレビもあまり見ない方(見る時間がほとんどないのだが)なので、世の中、こんなことになっているのかと、ちょっと驚いたのだ。戦争前夜のようといっても許されよう。
十二月八日錆びざる木綿針 若林波留美
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