2017年6月7日水曜日

樋上照男「街灼ける廃墟の壁にグラフィティー」(『丸太小屋』)・・



 樋上照男『丸太小屋(ログハウス)』(現代俳句協会)、集名は次の句からだろう。

   蜩の森透き通る丸太小屋(ログハウス)    照男

序文は宮坂静生、以下のように述べている部分がある。

 作者には、自然科学者特有の明快な対象把握に率直な情感が滲む句が多い。が、出会いの初めから大阪の下町人情がらみの写実句があり、樋上照男の俳句の基盤(べース)にある写実性こそまた科学者が立ち上がる出発点でもあったことを思わせるのである。

ただ、愚生のような科学に疎い者には、正直わからない専門用語・言葉がある(もっともそれが一句に効果をもたらしているのだが・・)。例えば、メスフラスコ、ビュレット、中性微子(ニュートリノ)など。
ともあれ、いくつかの句を以下に挙げておこう。

  秋風のふきゆく果や壺の中
  菊人形艶やかなれば死のにほひ
  霾天や大地の裂けし日の記憶
  炎天や化石となりし波の痕
  戦争が嫌で揚羽は森に消ゆ
  ビュレットの水際(すいさい)読みて春兆す
  メーデーや岳都の空にシュプレヒコール
  桔梗咲き何か覚悟のやうなもの

樋上照男(ひのうえ・てるお)、1952年、大阪府守口市生まれ。



0 件のコメント:

コメントを投稿