逆井花鏡『万華鏡』(雙峰書房・春月文庫)、句集名は次の句から、
万華鏡の中の宇宙や春日さす 花鏡
実は、この句集が送られてきたとき、とっさに「俳壇」7月号特集「つい口づさむ名句名吟ー韻律の魅力、俳句の愛誦性に迫る」のなかで、鳥居真里子がエッセイ「万華鏡と俳句」の末尾に、愚生の句「万華鏡寂しき鳥の手の夢ばかり」をそっと忍ばせてくれたので、てっきり、その特集を読んだ著者が手づから句集『万華鏡』を贈って下さったのだと思ったのだった(同時期だったので)。
序の戸恒東人によると、航空会社に長年勤務したキャリアウーマン、かつ、多趣味の人らしい。描かれる句の情景にそれがさまざまに表現されている。それを以下のように戸恒東人は述べている。
逆井花鏡さんは、小学二年生から清元を始め、現在清元と小唄の名取りであり、ほかに河東節三味線で歌舞伎座助六公演にも出演されるほどの実力者である。春月の新年会では、大学の同級生の尾上胡蝶さんと小唄・三味線の余興をして頂いているが、こうした邦楽の実力と素養が、三味線や歌舞伎を素材にした多くの優れた俳句作品の背景となっていることを上げなければなるまい。
ともあれ、集中よりいくつかの句を以下に挙げておこう。
ハンカチの木の花は片結びかも
ふらここを漕げば思はぬ高さかな
大いなる富士の全景初飛行
雛祭芸妓の襟の抜き加減
塔頭は拝観謝絶春時雨
夢に見し母の若さよ赤のまま
五月雨や立三味線の一の糸
胸に貼るお岩の乳房盆芝居
逆井花鏡(さかい・かきょう)1946年、千葉県野田市生まれ。
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