2017年8月27日日曜日

本井英「とんぼうやダム湖へ下る道は急」(『一句の現場』)・・

挨拶をする「夏潮」主宰・本井英↑

 昨夜は、「夏潮」10周年記念ディーナークルーズで東京湾を巡った。若い人たちは子ども連れであったり、同伴であったり、皆さん、船ならではの夜景と楽しい時間を過ごされたようだった。愚生は久しぶりに筑紫磐井にも会えて、四方山話をした。
 ブログタイトルの句「とんぼうやダム湖へ下る道は急」は、夏潮10周年記念誌『一句の現場』からのものだが、自解の一部を以下に紹介する。

 一句の出来た「現場」は平成二十八年十月二日の相模湖である。虚子一行がこの地を訪れたのは昭和十年九月一日。当時、実は「相模湖」はまだ無く、「与瀬」は相模川に沿った渓谷の地、ここから厚木への船下りが人気だった。その後戦時の電力不足から計画されたのが「ダム」。しかし完成時すでに戦争は終わっていた。

そして、このクルーズの司会を務めた前北かおるの句と自解も以下に記しておこう。

    惜春の心ラフマニノフの歌     前北あおる

この春(注・平成十三年四月)、私は大学を卒業して大学院に進学した。それに先立って、麻里子とパリへ卒業旅行に出掛けた。パリでは、ノートルダム寺院近くの隠れ家のようなアパルトマンに滞在した。(中略)
 「心」というのは余計な言葉で、俳句のリズムに合わせて「惜春や」と切るのがふつうだろうと思う。しかし、それでは収まりのつかない気持ちが、ぶっきらぼうだが揺るぎない表現を生んだ。空前絶後の一句だと思っている。




★閑話休題・・・

ところで、「夏潮」10周年記念の会に行く前に、現代俳句協会事務所に於て、第18回現代俳句協会年度作品賞の選考委員会が行われていた。選考委員は石倉夏生、浦川聡子、こしのゆみこ、佐藤映二、田村正義、原雅子、そして愚生の7名であるが、最終投票では全員の点がくまなく入った神田ひろみ「われを去らず」が選ばれた(無記名での選考である)。佳作には小西瞬夏「薄紙」、選考の詳報は「現代俳句」11月号に掲載される予定である。

   われを去らず三月十一日の水     神田ひろみ(第18回現代俳句協会年度作品賞)
   肉声として春昼の咀嚼音        小西瞬夏(同・佳作)

記念すべき現代俳句協会創立70周年の年での受賞、おめでとうございます。








0 件のコメント:

コメントを投稿