上賀茂神社奉納小丸屋扇子展『言ノ葉の舞』(六曜社)、上賀茂神社を舞台に、現代の詩歌を京扇子に装飾して展示した「言ノ葉の舞」展。その文芸扇子の制作を手掛けたのは、創業392年の京都の老舗・小丸屋住井とあった。その「言ノ葉の舞」展には、約110名による、詩、短歌・俳句・川柳が寄せられている。文芸扇子の装画は寺岡多佳、扇子の絵柄はすべて違う。図版の恵送にあずかった芦田麻衣子は、短歌と俳句を奉納している。作品は、
神山の雲を蹴散らし競馬勝負のことは埒の中風 芦田麻衣子
のけぞって神の舌出す赤ん坊
青葉舟天の汀に棹さして
愚生が二十歳の頃、三年間を過ごした記憶の中の上賀茂神社は、よく行った下賀茂神社から糾の森をぬけて質素な感じの社だったが、本図版によると平成27年の式年遷宮や世界遺産に登録されるなど、けっこう煌びやかな印象である。
ともあれ、文芸扇子に寄せられた詩歌のなかからアトランダムに以下にいくつかを挙げておこう。
はるかなものの訪れのように
山桃の実の小暗い茂みの中の子が
うたいだすのである 池谷敦子(詩)
寄り合いて葦辺に眠る少白鳥包むがごとき弥生の陽ざし 飯塚芳子
紅を点すだらりの帯のはなやかにわれも舞ひたき京都の夜に 水崎野里子
白木槿百花は天に向ひをり 辻中昭一
火の山へ火の声放つほととぎす みや子
内助の功卒業せしと妻笑ふ 馬場一甫
寺まいりよく誘われる年になり みとよ
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