2018年2月25日日曜日
宮入聖「桃の蟲桃ごと喰らふ親ころし」(「句歌」第一集)より・・
「句歌」第一集(発行・保坂成夫)に「桃の蟲」(未刊句集『ろくでなし』よりその一)と題した宮入聖の57句が掲載された冊子のコピーを藤原龍一郎が送ってくれたのだ。
まさに、いまや伝説と化していた宮入聖の作品となれば、少なくとも約25年ぶりの復活というとになる(いや30年になるかもしれない)。このたび、コピーを送ってくれた藤原龍一郎は「俳句空間」23号・休刊記念号特集「現代俳句の可能性ー戦後生まれの代表作家」(1993年6月)の「宮入聖論ー遊悲の人ー」にで、「ついに一人の俳人を選ぶなら私にとっては宮入聖である」と述べているその俳人である。
今回のコピーには宮入聖の句作品の部分と「句歌」第一集の奥付に付された刊行予告「小海四夏夫最終歌集『一瞥』/限定五十部/予価二千円/五月刊行予定」があるのみだが、この発行人・保坂成夫は、元「豈」同人・小海四夏夫の本名ではないかと推測した次第である(成夫→四夏夫)。小海四夏夫も宮入聖と同じく、これまで全く音信が途絶えていたかつての「豈」同人の一人である。
「俳句空間」休刊記念号のその特集には谷口慎也、攝津幸彦、西川徹郎、宮入聖、金田咲子、久保純夫、筑紫磐井、江里昭彦、大屋達治、正木ゆう子、片山由美子、対馬康子、林桂、長谷川櫂、夏石番矢、四ツ谷龍、田中裕明、岸本尚毅、18名を自選12句と各俳人論で紹介している。すでに25年前のことだから、現在でも活躍著しい俳人を、かの若き時代に、俳壇的には駆け出しだったころ、よくも大胆に選んだものだと思う。その折りの宮入聖の自選12句のうちから以下に、
青大将に生れ即刻殺(う)たれたし 宮入 聖
滴りや性慾巌のごときもの
感懐
泉掬ぶ「手錠のままで光りゐよ」
蜀葵母があの世に懸けしもの
水鳥や毀れんことを愉しむや
ともあれ、今回の「未刊句集『ろくでなし』よりその一」から、いくつか紹介しておこう。
鬼灯を堕胎させたる妻楊枝
赤ん坊しづかに父母の契りきく
バカヤロと自分のこゑで叱られる
兎のやうにものくふ故郷の女たちよ
帽子屋に陛下の帽子まだ架かる
三陸の津波に指揮者ありとせば
十人も産んで一人で生きてゐる
鳴ってゐたでんでん太鼓泛いてゐる
皺くちゃの日の丸掲ぐ父母の戦後
宮入聖(みやいり・せい)、1947年生まれ。
0 件のコメント:
コメントを投稿