2018年7月11日水曜日
大関靖博「貝塚に貝累々と敗戦忌」(『大楽』)・・
大関靖博第6句集『大楽』(ふらんす堂)、「あとがき」には、
私の物事に対する姿勢は真実に大変こだわりを持つものである。この原点は八歳の時に遡る。八歳の時に結核になり二ヶ月学校を休んだ。六十年前の結核は死の病として恐れられていた。その時、担任の先生と保健の先生の同席のもとで放課後病気の説明を受けた。今でいえばインフォームド・コンセントにあたるであろう。それまでの世俗的人生観が吹きとび人生は無と観ずるようになった。その時読んだ佛陀の伝記の影響だったかも知れない。その後十八歳で華厳経という経典に格別の関心を抱くようになった。今日迄何回か生死のはざまをさまようことがあったがいまに至るまでこの考えは深まるばかりで全く変りがない。
とあって、生における諦念を早々と迎えてしまったか。それでも前向きな姿勢は、
今回のタイトルの「大楽(だいらく」は〈人生大いに楽しむ〉と読むことも可能である。
とも記し、その心境を披歴している。また、芭蕉「奥の細道」を引き合いに出しながら、
芭蕉は日光の養源院にゆき、そこから別当寺の大楽(たいらく)院に案内され、狩野探幽の子の探信が訪問していたためしばらく待たされてから東照宮を拝観したようだ。それから黒羽の大関家の家老の家にしばらく滞在したのち白河の関を超えたのである。
と記している。たぶん、本句集は大関靖博古希の自祝の意もあろう。愚生の好みに偏するが、いくつかの句を以下に挙げておきたい。
春耕はむかし都の大地かな 靖博
二三本花も摘みけり草摘めり
今漉けば櫻紙なり花筏
英語屋に徹する我や漱石忌
水元公園
菊枝さん今年も菖蒲咲きました
麦秋や水辺に空のはみだして
佛壇に父母の西瓜を二個供ふ
小鳥来る青い鳥ではなけれども
侘助の落花の数を掃きにけり
白木蓮に人生の今白紙かな
大関靖博(おおぜき・やすひろ)1948年、千葉県生まれ。
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