2018年9月29日土曜日
山﨑十生「もう誰もいない地球に望の月」(『続 現代の俳人像』)・・
『続 現代の俳人像』(東京四季出版)、前著『戦前戦中生れの 現代の俳人像』(平成24年刊)に続く第2弾の書。いずれも「俳句四季」〈今月の華〉に連載された俳人の代表句とエッセイと写真を収めた写真集である。続編の本書は、「俳句四季」平成19年1月号から30年7月号まで、173名を収載する。
ところで、ブログタイトルに挙げた山﨑十生「もう誰もいない地球に望の月」は、「この作者は長く『山﨑十死生』の名で俳句を発表していました。いつの頃からか、死の字を外し生のみになったのです〈誰もいない地球〉が見え始めたからではないか、それも一生ならぬ十生を生きるという覚悟です」(宇多喜代子)という、俳号「十死生」時代の句である。
ともあれ、収載された中から、以下に愚生好みの句を挙げておきたい。
岬からはじまる戦後秋つばめ 秋尾 敏
きよしこの夜の浴槽たたきける 浅沼 璞
知命なほ草莽の徒や麦青む 伊藤伊那男
金亀虫アッツに父を失ひき 榎本好宏
両翼は孤を愛しつつ鷹渡る 大高 翔
地下街の列柱五月来たりけり 奥坂まや
一瞬にしてみな遺品雲の峰 櫂未知子
蝶生まれまづ美しきものへ飛ぶ 河内静魚
貫くはわが道抒情南畦忌 河野 薫
また美術館行かうまた蝶と蝶 佐藤文香
絮蒲公英と戦争を乗せ自転せり すずき巴里
俳諧はほとんどことば少し虚子 筑紫磐井
天上にちちはは磯巾着ひらく 鳥居真里子
大空はきのふの虹を記憶せず 長谷川櫂
一枚の黄落を持ち帰る日よ 坊城俊樹
みとることなりはひとして冬の虹 細谷喨々
空冥の微塵となりて鷹渡る 正木ゆう子
日の丸のそよともできぬあたたかさ 横澤放川
されど雨されど暗綠 竹に降る 大井恒行
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