2018年9月15日土曜日

高尾早弓「海原へなだるる夜の鰯雲」(「星合集」Vol.12)・・



 「星合集」Vol.12(俳句座☆シーズンズ)は、黛まどかが主宰した女性だけの俳句結社誌「東京ヘップバーン」が平成18(2006)年、100号をもって終刊したのちに、その仲間たちで引継ぎ、結成した。やはりこれも女性だけのグループの俳句誌である。一年に一度の刊行ペースらしい。ホームページによると、全国に5つの支部(東京・湘南・名古屋・三重・九州)があり、毎月の句会の他、黛まどかを招いての講演や、イベントも開催しているらしい。
 今号は第12回シーズンズ俳句賞の発表で、静岡・緒方恵美が受賞している。選考方法は、2017年4月から翌年3月までの会員投句より、各白百合衆(いかにも、女性グループらしい命名だが)による選を受け、かつ、欠詠がなく、会の運営に積極的に関わる、将来指導者としての資質を審査して行われるという。愚生のような怠惰な者には、到底、候補などになりようのない厳しさである。以下、受賞作より、

  路地裏に醤の匂ふ夕薄暑      緒方恵美
  酔芙蓉今生の紅つくしけり
  風よりも光に揺れて猫柳

 雑誌は、瀟洒、シンプルであり好感この上ない印象である(健康な俳句精神を思う)。俳句作品、ミニエッセイ、英語俳句に写真、吟行報告など充実の誌面である。白百合衆・鈴蘭衆の一人一句を以下に挙げておこう。

  月を得てよりの二声青葉木菟     菅野奈都子
  弁天の紅の剥げたる余寒かな     松下美奈子
  昇降機星の涼しきところまで      高尾早弓
  手枕にガラスの風鈴ひとつ鳴る    石井優美子
  目借時尖り続けるシャープペン     堤亜由美
  黙禱や雨の真中に百日紅       降矢とも子
  大川の風を百基の神輿かな        美智子
  いかなご煮母の背筋の伸びにけり   山本ゆうこ
  遺されし日記の余白青嵐        角田智子



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