2018年12月13日木曜日
安西篤「八月の重力ありぬ掌を組めば」(「海程多摩」第17集より)・・
「海程多摩」第17集(発行人・安西篤)、「あとがき」にもあるが、なんといっても特集「追悼金子兜太先生」である。「海程」は終刊したが、「海程多摩」はその名称とともに、そのまま継続するとある。それがいいと思う。その「あとがき」に、
我々は先生の衣鉢を継ぐものとして、「海程」の名を忘れることなく、新しい世代にも引き継いでゆきたいと思う。
と記されている。また、
「海程」がこの夏終刊。そこに集った多士済々の力を集め、新たな同人誌「海原」がこの秋生まれた。これに結集しつつ、同人誌という立場を同じく並航する。「海程多摩」の今後の航程はそう単純なものではない―。
とも記されている。ここでは、同人諸氏の「追悼の一句」を以下に挙げておきたい。
師の在りてこその秩父や青葉闇 安西 篤
春雷やどこまでもゆく一輪車 新井博子
梅雨の月全力疾走の猪照らす 石橋いろり
脊梁山脈見遣れば母郷橡の花 伊藤 巌
師の影追えぬ寂しさ諸葛菜 伊藤雅彦
麦の秋笑顔の兜太師いるような 植竹利江
老いて童心死して童顔水戸の梅 植田郁一
杜甫草堂出づ師と腕組めば月の匂い 大上恒子
死ぬまでは兜太と居たい曼珠沙華 岡崎万寿
葬(はふり)かな目鼻なくゆく葦の水 黒岡洋子
立禅の師の声ふっと春あけぼの 黒済泰子
鬱蒼とした温もりの片隅に 小松 敦
「研究会」語り尽きない蟇 小松よしはる
兜太師逝く急発進の春一番 篠喜美子
二月逃げる秩父音頭はヨーイアサ 鈴木砂紅
別冊のようですこの世の夕焼けは 芹沢愛子
如月や兜太全集屹立す 竹田昭江
大いなる不在たんぽぽの頸長し ダークシー美紀
魂に質量秩父に春満月 抜山裕子
炎天の墓碑忘るまじ蟹歩む 野口佐稔
毒舌は秩父訛りで梅真白 平田恒子
兜太師の選なればこそ曼珠沙華 三木冬子
竹の秋弔辞だんだん迷子のよう 宮崎斗士
狼を誘う蛍は兜太光 望月たけし
秋の田を風の馬過ぎ一狐去り 柳生正名
引き写す兜太の百句秋彼岸 山本きよし
さわらせてやわらかきてのひら犬神に秋 らふ亜沙弥
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