大沢美智子第一集『旬日』(本阿弥書店)、序は能村研三、それには、
大沢美智子さんの第一句集名を『旬日』とした。
うちの娘でゐる旬日の雛かな
旬とは季節のはしりの手頃な時期をいい、旬の食べ物はその頃合いのことをいう。一か月を三分割して初旬・中旬・下旬というように、旬日とは概ね十日間ことをいう。
あと数日で他家に嫁いでしまう娘との貴重な時間を大切にしながら雛を飾った。「うちの娘でゐる」という表現には親として感慨無量の確かな実感がそこにあった。
という。また跋文の森岡正作も、集名となった句について、
(前略)
お雛様を飾る期間は大体十日間ぐらいで、その間はお雛様を我が子のように可愛がり、慈しむというのである。お雛さんと遊んだお嬢さんももうお嫁さんになり、お雛さんを見ていると娘さんのようでもあり、その子供時代まで思いが遡ることもあるのである。入門当初からこのような豊かな句を詠む大沢さんの才能を、翔先生は早くから見抜いていたのであろう。
と率直に述べている。 ともあれ、集中より、いくつかの句を以下に挙げておこう。
着せ替へて白涼しけれ黄泉て父 美智子
髪切つて産み月に入る冬帽子
シベリアの子が戻り来と白鳥守
林翔先生ご逝去
菊凛々今お別れの時止まれ
囀りの空をみがいてゐたりけり
冬花火音霊(おとだま)
は嶺々駈けめぐり
春の月欅の洞にそどきけり
春愁や壁画の中に棲む鳥も
風船葛ふるふるたれが息入るる
ランドセル放りて魔女やハロウィーン
美登利信如まぎれをらぬか酉のまち
大沢美智子(おおさわ・みちこ) 昭和15年、東京生まれ。
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