2019年3月20日水曜日
向瀬美音「噴水の飛沫マリアを濡らしけり」(『詩の欠片』)・・
向瀬美音『詩の欠片』(朔出版)、本の背に、「日仏英三か国語句集」とある。序文の山西雅子は、
さて、この句集は日仏英三か国語で編まれており、季寄せも三か国語で付いている。美音さんも私も「有季」の俳句を作る立場の俳人だ。
とあり、その結びには、
詩の欠片大西洋に拾ふ夏
ここまでのびやかな句、しっとりした句、どっしりとした句、冒険句を挙げてきたが、美音さんの句には華やかさ、エロス、自由、郷愁などまだまだ多くの魅力がある。この句集が多くの佳き読者を得るよう心からお祈りする。
と記している。また、解説の永田満徳「『国際季寄せ』の意義」は、
俳句大学の国際俳句学部は俳句文化の更なる発展に寄与することを目的としてFacebook「Haiku Column」を立ち上げ、俳句の本質かつ型である「切れ」と「取り合わせ」を取り入れた二行俳句を提唱してきた。二行俳句にこだわる理由は、三行書きにしただけで散文的なHaikuが通用していることに危惧を覚えたからである。
「Haiku Columun」のメンバーは1400人を超えて、一日の投句数は100句を下らない。
と述べ、向瀬美音はその主宰をつとめ、その「全句に目を通し、気になった句はその日のうちに訳して、夜には永田満徳学長からのコメントを得て、毎日発信しています」(「あとがき」)という。どうやら、向瀬美音は八面六臂の活躍らしい。こうした実践の具体的な成果としての句集、1ぺージに訳出されている表記もそうしたレイアウトになっている。一例を挙げると、一句(縦書き)の下に二行の英・仏の訳が付されている。
純白のシーツの軋み春の昼
Squeaking of the white snow sheet
spring afternoon
crissement d'un drap blanc comme la neige
apr'es-midi de printemps
(註:愚生の技術では、うまく表記できないので、訳出の表記の雰囲気だけで・・・)
ちなみに、巻末には、これも「国際季寄せ」として450季語が訳出されている。
ともあれ、いくつか句を以下に挙げておこう(日本語のみ)。余計なことだが、現代仮名遣いの句ならばともかく、歴史的仮名遣いは訳出された外国語表記にどのようにそのニュアンスは反映されるのだろうか。
潮騒を籠めて畳むや春日傘
草原を裸足で歩く地球の日
ひとひらに一つの翳り緋のダリア
秋光を分け合ふ海と空の蒼
見はるかす夜空の贄や冬隣
くるりくるりちよんかけ独楽のよく回る
餅間のシチューのセロリ匂ひけり
ぽつぺんに殉教の音海の音
向瀬美音(むこうせ・みね) 1960年、東京生まれ。
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