2019年11月19日火曜日
福島泰樹「前衛は方法ならずましてはや意匠にあらず反逆の志よ」(「短歌往来」12月号より)・・
「短歌往来」12月号(ながらみ書房)、ブログタイトルにした短歌「前衛は方法ならずましてや意匠にあらず反逆の志よ」は、福島泰樹連載「時言・茫漠山日記より/212 バリケード・一九六六年二月」からのもので、懐かしく、思わず読んだ。それには、
十月十三日(木)角川短歌グラビア「思い出の記事」脱稿。一九六六年六月、敗走してゆく闘争の中、吹き曝されたバリケードに凭れて読んだのが、菱川善夫「実感的前衛短歌論ー『辞』の変革をめぐって」であった。体に激震が走った。そうか、激しく葛藤し鬩ぎ合う詩型短歌は、自らの志を問う思想であらねばならない。それゆえの美、それゆえの前衛!
とあった。そういえば、先年、面識のない菱川喜夫夫人・和子さまより『菱川善夫歌集』(短歌研究社・2013年12月刊)、「夫の初めての歌集ー。志を立て短歌の道を選んだ十代の若き日からの歌が、一冊の歌集となったことを、夫は悦び感激するであろう。そのことを私の喜びしたい」(「あとがき」)とある、まさに遺歌集にして全歌集を恵まれたことを、まざと思い出した。
ともあれ、本号のメイン特集は、愚生も寄稿した特集「題詠による詩歌句の試み17 街」についての15名による競作である。詩人は貞久秀紀・井坂洋子・野村喜和夫・中本道代・竹田朔歩の5名(詩篇は長いので割愛する)。以下に歌人、俳人の各一首、一句を掲載順に紹介しておきたい。
マンションの八階に住みてわが娘(こ)飼ふ二匹の猫を父はかなしむ 小池 光
「千里往って千里還る」。寅蔵の女の子は霊力を買われ、
出征兵士のために赤い糸を刺し続けた。
辻小春千日針をけふも刺し 黒田杏子
ドイツでは
電話なき電話ボックスに本あふれ物々交換古本市場 俵 万智
葉牡丹はビルの根本に滲みをり 櫂未知子
鎌倉は紅葉谷(もみじがやつ)の奥の奥瑞泉寺はあり訪ねて来ませ 大下一真
走る子供と雄日芝と雌日芝と 山西雅子
街はただ駅のめぐりに 坂の上はけはひのあらず鎖せる実家 花山多佳子
待つわって言ったあんパン街は雪 坪内稔典
「新宿の眼」というガラスの角膜に映るすべてを見ているなにか 松岡秀明
街角より白泉の猫丘を見る 大井恒行
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