2020年4月16日木曜日
小川双々子「倒れて咲く野菊よ野菊よと日当る」(『名歌と名句の不思議、楽しさ、面白さ』より)・・
武馬久仁裕編著『名歌と名句の不思議、楽しさ、面白さ』(黎明書房)、帯の惹句に、
◆斎藤茂吉の名歌
赤茄子(あかなす)の腐れてゐたるところより幾程も(いくほど)もなき歩みなりけり
茂吉の「赤茄子」は、/なぜ「トマト」ではいけないのか。
◆与謝蕪村の名句
夏河を越すうれしさよ手に草履(ぞうり)
蕪村の「夏河」は、/なぜ「夏川」ではいけないのか。
などの疑問に分かりやすく答えます。
いままでにない新鮮な読み方で、/古今の名歌二一首/名句四七句を楽しめる
待望の一冊!
とある。ブログタイトルに挙げた句「倒(たお)れて咲く野菊(のぎく)よ野菊よと日当(ひあた)る」は、著者・武馬久仁裕の師・小川双々子の句である。因みに、その部分を抄出しておこう。
小川双々子— 倒れて咲く(くり返し)
【訳】倒れても咲いている野菊を一生懸命励まし、日が当たっていることだ。
【鑑賞】「野菊よ野菊よ」のくり返しは、太陽(日)が暖かな光を限りなく投げかけ、「野菊よ立ちなさい、野菊よ立ちなさい」といつまでも野菊を励ましていることをを表現しています。
そこには、倒れても咲いている野菊に、なおも命の輝きを失わない姿を見て感動している人がいます。〔季語・野菊。季節・秋〕
【面白さ】「野菊よ野菊よ」という呼びかけの言葉によって、日が擬人化されています。日が「野菊よ野菊よ」と呼び掛けているのです。
そのように呼び掛けられることによって野菊もまた擬人化され、日常の光景を超えた救いの世界が現れることになります。
とあり、【こんな人】で小川双々子(おがわそうそうし)の略歴(1922~2006年・岐阜県生まれ)が記され、【こんな句も】で「枯菊(かれぎく)を焚(た)き天(てん)よりの声を待つ」双々子の句が紹介されている。巻頭の「はじめに」では、
この本の特徴は、(中略)鑑賞する助けになるキーワードを、それぞれの作品に付けたことです。例えば、小野小町の「花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに」のキーワ―ドは、〔くりかえす無常〕です。
という。編著者の武馬久仁裕の最近の俳句の啓蒙活動は活発である。俳句の読みのための書籍を出版し、「黎明俳壇」を起こし、極めて精力的な印象を受ける。たぶん、現在、流布されている、いわゆる入門書の類に満足していないのだろう。飽き足らないのだ。ならば。自分で書こうということにちがいない。
武馬久仁裕(ぶま・くにひろ) 1948年、愛知県生まれ。
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