2021年7月19日月曜日

高柳重信「友はみな征けりとおもふ懐手」(「俳句四季」8月号より)・・・


 「俳句四季」8月号(東京四季出版)、特集は「戦争を詠むということ/後世に残したい戦争を詠んだ句」。論考は外山一幾「戦争俳句を読みたくない」、樫本由貴「令和のいま、戦争を詠むということは」、今泉康弘「近代・機械・戦争ー戦火想望俳句とは何か」。「後世に残したい戦争を詠んだ句」は、以下に紹介しておこう( )内は句を選んだ執筆者。


   大戦起るこの日のために獄をたまわる    橋本夢道

                        (飯田史朗・黒岩徳将) 

   戦死せり三十二枚の歯をそろへ       藤木清子(栗林浩)

   爛々と晝の星見え菌生え          高浜虚子(田島健一)

   夜濯ぎの水に涙ははばからず       文挾夫佐恵(松下カロ)

   玉音を理解せし者前に出よ         渡邊白泉(松本てふこ)

   春暁の樹々焼けゆくよむしろ美し      桂 信子(宮﨑莉々香)

   友はみな征けりとおもふ懐手        高柳重信(大井恒行)


 他にも、山﨑十生「紫 創刊八十周年」(今月のハイライト)、青木亮人「現代俳人スケッチVOL.24/ー坪内稔典」など、興味、面白い記事も色々あったが、ここでは、筑紫磐井「俳壇観測」連載・223の「二つの協会ー協会に入ろう・どんどんはいろう」の部分を以下に引用しておこう。


 (前略)目的で見る限り二つの協会はあまり変わりなく、伝統とか有季とか、前衛の言葉も出てこない。

 「この会は、現代俳句の向上を図るとともに会員相互の親睦を深め、文化の興隆に寄与することを目的とする」(現代俳句協会規約第三条)

「この法人は、俳句文芸の創造的発展とその普及をはかり、もって我が国文化の向上に寄与することを目的とする」(俳人協会定款第四条)

 現に二つの協会に入会している人も多い。協会より会員の方が進歩的なのである。

(前略)協会への入り方がわからないという人も多い。こういうコラムでいうのは不適切かも知れないがニーズがあれば答えるのもコラムの担当者の仕事だろう。入会したい人がいれば、筑紫が運営する雑誌「俳句新空間」(会費無料。一般下会員には雑誌無料送付)に参加していただければ好きな協会に推薦させていただく。

〇俳人協会:推薦枠をもっている。入会金二万円と年会費八千円。

〇現代俳句協会:推薦人になる。入会金五千円と年会費一万円。ただし私の雑誌は現俳の支援団体になって助成金が出るので入会金を新規入会者に還付する方針である。


 因みに、筑紫磐井は、本年4月より、現代俳句協会副会長に就任している。俳人協会でも長年にわたって評議員を務めていたと思う(愚生の記憶では・・)。

 それにしても、現代俳句協会も入会しやすくなった。設立初期には総会で過半数の賛成必要であったり、愚生の入会のころ(30年前)は、推薦人の他に、最低10票くらいの賛成票が必要だった。愚生は数年前に辞めてしまったが、日本文藝家協会は、たしか二名の会員推薦が必要だったように記憶している。

 ともあれ、本誌本号より、いくつかの作品を以下に挙げておきたい。


  汗吹いてあげる万歳してごらん      津髙里永子

     噎せ返る百合の小路を残さるる       中西夕紀

     長き疫禍

  この秋は犀の鎧もほころびぬ        角谷昌子

  くりかへす白雨のやうに黒い雨       堀田季何

  一枚のうすき桔梗の絽のきもの燃えてしまいてこの世にはなし  永田 紅

  もう誰もいない地球に望の月        山﨑十生

  写真にはたくさんの息夏落葉        対馬康子

  ゆるく着て端居の人になりにけり    こしのゆみこ

  山滴る川を隔ててつぎの駅         花谷 清 

  天の川華厳の滝へ繋がれり         石倉夏生



     撮影・鈴木純一「地方紙の詰碁が詰まず茄子いただく」↑

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