第29回「ことごと句会」(9月18日付け切手句会)、もうひとつの高点、同点句である渡邉樹音「考えるふりがお上手いぼむしり」があったが、このところ、毎回のように渡邉樹音が高点を独占していたので、一矢を報いた金田一剛「二枚目の便箋それは白い秋」に敬意を表してブログタイトルにした。以下に一人一句と寸評を挙げておこう。因みに兼題は「鳴」と雑詠。
考えるふりがお上手いぼむしり 渡邉樹音
九月の風季節は多重人格で 江良純雄
迎え火に苦手な隣人(ひと)の歩き来る 武藤 幹
うずもれて書架の迷路や司書の冷え 渡辺信子
秋暑し黒猫を抱くラララ らふ亜沙弥
今朝も雨 9月の床に発条(バネ)つける 照井三余
鵲の空鳴きピカピカジャポニカ 金田一剛
秋五彩(あきごさい) 雲にも風にも乗りたまえ 大井恒行
*「二枚目の便箋・・」ー儀礼的に添えられた白紙の二枚目だろうか?きっと一枚目も極短い文なのだろう。あっさり書かれたようで私には沁みた。(幹) /昭和のフォークデュオという感じがします。(樹音)
*「九月の風・・」ー多重人格がえもいわれぬ・・・(亜沙弥)
*「迎え火に・・」ー都会に住みだすと、田舎と違い、会いたくない奴と玄関の前で朝に会う。(三余)
*「うずもれて・・」ー静寂の中に立つ書架は確かに不思議な迷路。慣れている司書も迷路に妖気を感じる時も。迷路に尽きる。(純雄)
*「秋暑し・・」ー黒猫を抱いた絵でいえば、竹久夢二の黒船屋だろうか。なげやりとも思えるラララがいい。何しろ厳しい残暑だ。(恒行)
*「今朝も雨・・」ー雨の日は物憂い。ダラダラと時間が過ぎるのを止めるために跳んでみる。字空けの効果はいかに?(純雄)
*「鵲の・・」ーカササギから始まるカ音の引き出してくる言葉遊びの句である。最後もジャポニカのカで念を押したのだ。そこにいささかの諧謔味がある。(恒行)
*「秋五彩・・」ー清々しい秋晴れには、何でもできそうな気がする!(信子)
★閑話休題・・春風亭昇吉「負けても勝っても母秋刀魚焼く」(「プレバト」9・16放送)・・・
遊句会のメンバーで、今年5月に真打昇進を果たした春風亭昇吉、その売りが、東大卒、初めての落語家ということだが、その後見人とでもいうべき人が武藤幹である。真打披露公演にも出かけているはずだ。今回のプレバトの春風態昇吉の原句は「負けても勝っても母秋刀魚焼く」であった。夏井いつきの添削によって「試合如何(いかに)子の好物の秋刀魚焼く」であったが、この両句の出来に、いかほどの差があるかないかは、読者のみ知るところだろう。もちろん夏井いつきの手が入ることによって、表現的にはなめらかに進歩したかも知しれないが、句の稚拙によるエネルギーに魅力はないのか・・・。それにしても、プレバトデビューを果たした当初、「万緑に提げて遺品の紙袋」はよく完成された句だったと思う。古人も言っているように、生涯に一句でもあれば瞑すべしと・・・。
撮影・鈴木純一「雑巾を沈めて静か秋の水」↑
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