飯島章友川柳句集『成長痛の月』(素粒社)、帯文は東直子、それには、
確かにこの世のことのようで、でもなんだかそんなことはどうでもよいように思えてくる。永遠の興味津々と平熱の茶目っ気が句の中に閉じ込められた。
とある。また、著者「あとがき」には、
本句集には、二〇〇九(平成二十一)から二〇二一(令和三)年までの二四八句を収録しています。この十二年間、現代川柳・伝統川柳・狂句的川柳・前句付・短句(十四文字・七七とも呼ぶ)などいろいろなスタイルを経験してきました。そればかりではありません。創作活動の半分は現代短歌に費やしてきました。だからこそ自分の作品はクロスオーバーなのだ、などと言えればかっこいいのですが、とてもそこまでは達していません。ただ、もしもいくらかの多様性と、それをやんわり統一している人格とを感じていただければ嬉しいです。
とあった。集名に因む句は複数ある。例えば、
少年は成長痛の器かな 章友
しおりひも垂らしたままの成長痛
ともあれ、集中よりいくつかの句を以下に挙げておきたい。
ことだまにたまった水を抜いてやる
鶴は折りたたまれて一輪挿しに
浮いてたね鏡文字など見せ合って
芽キャベツの早口にまだ慣れません
継ぐ者の途絶えた「流し川柳」だ
図書館の書庫のどこかに獏がいる
自画像を描いて殺意を確かめる
遺伝子が違うのでもう読めません
はじまりは回転寿司の思想戦
うっすらと白髪くっきりと昭和
地球儀をなでゆく夜の ここが痛点
月の墓場をだれも知らない
飯島章友(いいじま・あきとも) 1971年、東京都生まれ。
撮影・芽夢野うのき「傷また増えてわれは美しき花韮になる」↑
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