秦夕美第18句集『金の輪』(ふらんす堂』、著者「あとがき」に、
これは第十八句集。ふっと、「金の輪」という言葉が浮かんだ、と同時に〈金の輪をくゞる柩や星涼し〉の一句が出来た。そうだ、この句のための句集を作ろう。すぐ、ふらんす堂にメール。前句集以後の俳句を書きだしてみたら百五十句しかない。じゃあ、百五十句作ればいい。ひと月ちょっとで書いた。(中略)
今回は陰陽五行説にちなんで、木、火、土、金、水に分けた。木と火は陽、土は中間、金と水は陰に属し、いろんな吉兆を占うという。「令和俳句叢書」に入れていただいた。はじめての句集が「鷹俳句叢書」だったから、「叢書で始まり叢書で終わる」のもいい。
とあった。柩の句もいくつかあった。
般若にはならず柩に大西日 夕美
冬うらゝ柩のなかの緋色かな
どこやらで柩もえをり枇杷の花
金の輪をくゞる柩や星涼し
青梅に入棺いそぎゐたるらし
金と柩・・・、これが最後、これが最後と仰りながらも、以後の著作も数冊になろうか。まだまだ上梓されて行きそうである。ともあれ、集中より、以下にいくつかの句を挙げておこう。
夢の字は艸(くさかんむり)や夏嵐
水仙や闇にかぶさる闇ありて
炎昼のマリオネットになき背骨
火の鳥を翔たす子宮(こつぼ)よ秋の風
黄塵やテレビは飢ゑと殺戮と
聖戦のための盾とや汗の痕
薔薇に雨とても死ぬとはおもへない
いにしへの水の香ぞする心太
さみしいといへぬさみしさ花石榴
八月や息するうちを人といふ
雁や泪は涙ひきつれて
秦夕美(はた・ゆみ) 昭和13年生まれ。
芽夢野うのき「神さまが咥えてる踊るよ薔薇寒し」↑
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