2022年2月27日日曜日

攝津幸彦「あたし赤穂に流れていますの鰯雲」(「垂人 41」より)・・


 「垂人(たると)41」(編集・発行 中西ひろ美、広瀬ちえみ)、中に、鈴木純一「超訳 芭蕉七部集/『春の日』(二)なら坂やの巻」がある。連載である。本号だけでも10ページに及んでいる。やがて、一本にまとめられれば、面白い読み物になると思う。冒頭部分のみだが、以下に引用しよう。


     三月六日野水亭にて      且藁

   なら坂や畑うつ山の八重ざくら

  奈良七重七堂伽藍八重櫻・・・・京から奈良へ入る手前に、奈良坂という坂がござましょう。今じぶん参りますと、あちこちで斜面を耕す人を見かけます。陽気も良くなり、畑仕事が始まるのですな。かつての賑わいは失われたとはいえ、奈良の都でございますよ、八重櫻でございますよ。けふ九重に、と古歌にある如く、今も変わらず、花は咲くのでございますな。

 野水さん、お庭の桜も、なんと見事に、匂いぬるかな、でございますな。


  その他、「や・かな・けりの句会/句会のおまけの回転題詠句会」、「雀連会2/芭蕉七部集『冬の日』最後の歌仙『霜月や』と連句実作」など盛沢山。広瀬ちえみの「こんな本あります⑪」の魚住陽子著『水の出会う場所』(駒草出版)評には、昨年8月に亡くなった魚住陽子の句集が待たれてならないとあったが、仄聞するところによると、遺句集の企画があるらしい。ともあれ、以下に本号より、一人一句を挙げておこう。


   眼鏡ふく数へ日だからみじゅくだから   中西ひろ美

   いくつもの一生涯や冬銀河         川村研治

   走り去るトラック 豚の耳ピンク     高橋かづき

   寒牡丹その名は卑弥呼きのうきょう     坂間恒子

   ブロッコリー花の数だけ死んでいく     中内火星

   理髪屋のホース頭をスワンとす       渡辺信明

   春の山地図を広げて眠くなり       ますだかも

   夢の虫石の街路のどこからか        野口 裕

   魔術師のいちのさんの指の音       広瀬ちえみ



★閑話休題・・攝津幸彦「国家よりワタクシ大事さくらんぼ」(「香天」通巻66号より)・・


 攝津幸彦の句のつながりで、「香天」通巻66号に、三好つや子「攝津幸彦を探る」が掲載されている。その中から想い出深い一句を挙げた。この句は、第6句集『陸々集(ろくろくしゅう)』(弘栄堂書店)の帯に、仁平勝の合本形式の「『陸々集』を読むための現代俳句入門」の中から愚生が選んだものだ。それには「これは『陸々集』の思想的なマニフェストにほかならない」(仁平勝)とある。


   

         撮影・芽夢野うのき「春の雪母老いたれば泥となり」↑

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