第35回・メール×切手「ことごと句会」(3月20日付け)、兼題一句は「印」、雑詠3句。以下に一人一句と寸評を挙げておきたい。
矢印を吐き出している雉の喉 江良純雄
春の庭親指姫が走り出す 渡邉樹音
一時(いちどき)に受け取りぬ春の包むもの 渡辺信子
寝足りし弥生の蕾は肩を組む 照井三余
茣蓙敷いて花見の席の父の影 杦森松一
平凡な景色絵にする春の雷 武藤 幹
お生まれは戦後の昭和に〇印 金田一剛
平熱が続く毎日沈丁花 らふ亜沙弥
オミクロンプーチン花どきの鬱王か 大井恒行
【寸評】
・「矢印に添わぬ意思あり草青む」ー大勢に流されないキャラか。はたまた単なる青二才か。下五の「青む」の解釈次第で味が変わるが、前者と考えたい(純雄)。
・「矢印を・・」ー雉の鳴き声を形にしてみたら「矢印」、というのは言い得て妙!やられました(信子)。
・「春の庭・・」ー庭にムスカリが咲いたと友に知らせるとムスカリは親指姫のこびとたちと言ったのだ(亜沙弥)。
・「一時(いちどき)に・・」ー曲者の春を宿す、様々なモノを一時に!持て余す!!「春を包むもの」が秀逸(幹)。
・「寝足りし・・」ー寝足りしがよくわからないのですが、球根の蕾たちかな。明るい句ですね(樹音)。
・「茣蓙敷いて・・」ー父の影は、現実の影であろうか(恒行)。
・「平凡な・・」ー19日の夜、春雷ともいえる雷を耳にしました。今までこ時期の雷は意識したことも聞いたこともなかったのですが、冬の雷とは違い優しい響きでした(松一)。
・「お生まれは・・」ー団塊世代の私、ズ~ット此れを遣って来ました(幹)。
・「平熱が・・」ー退屈な毎日?それでも、沈丁花の甘く強い香りがするのだ(恒行)。
☆金田一剛の便りには、コロナも沈静化してきましたので、なんとか「集いの句会」に戻したいと思います。そこで、年会費とか規約(ほとんどありませんが…)を決めます。集いの句会にできるかどうか、4月8日に判断したいと思います」とあった。
★閑話休題・・野口る理「薄氷に壊れる強さありにけり」(「詩歌の森」第94号より)・・
日本現代詩歌文学館・館報 第94号「詩歌の森」の巻頭は福間健二「詩を書く場所」、他に野口る理「敗北と詩」、斉藤梢「紙と鉛筆」、齊藤大輔「川柳は元気です」、今井恵子「全歌集と短歌史」などの記事があった。ここでは、野口る理の部分を引用しておきたい。
(前略)さて、なぜ私は俳句を選んだのだろうと考える。すると、奇しくも今規格のテーマと重なる、高柳重信の「敗北の詩」という俳論を思い出すのだった。重信は「俳句を選択した動機の中に含まれている半ば無意識に似た敗北主義こそ、逆にさかのぼって俳句の性格を決定する重要な要素」だと主張する。そして俳句に限らず、「廃滅の寸前には、たいてい爛熟しきった頽廃的な美しい灯を守るための、ごく少数の人たちが存在する」とし、その守り人には「虚無的な敗北的な動機により、この俳句形式を進んで選択した少数の孤独な魂の持ち主」がふさわしいと言う。「その頽廃こそ、新しい芽生えの準備なのだ」と。
重信の言葉を完全に首肯するわけではない。しかし、やはり敗北や孤独と創作には、深い結びつきがあることを、今企画を通して強く思い知るのであった。
撮影・鈴木純一「プーチンのあの目で西を見てごらん」↑
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