すずき巴里第2句集『櫂をこそ』(本阿弥書店)、著者「あとがき」の中に、
(前略)私事では、三十五歳で設立した保育園を三十周年の折に息子夫婦に継承、順調な歩みにより創立四十周年を祝うことが出来ました。
また、保護司拝命十年の任期も無事務めあげ安堵致しました。
第二句集を編むにあたり、三六二句を並べますと、これまでに送り出した多くの園児たちのこと、更生に寄り添った対象者のこと、俳句仲間のこと、そして家族たちのあれこれが懐かしく皆々、幸多きことを祈るばかりです。
とあった。集名に因む句は、「ろんど」三代目主宰を継承した折の、
櫂をこそもて月光に漕ぎ出でな 巴里
である。ともあれ、愚生好みに偏するが、集中より、いくつかの句を挙げておきたい。
憲法記念日を園児に問はれたる
兄に「信」姉の名に「和」や終戦日
凍て星の数を尽くしてしづかな木
春の星大きくマララ・ユスフザイ
春昼の地下鉄パリへ行きさうな
望郷や風花消えてまた湧きて
野菊の墓までを素秋の川渡る
サンタクロース鳥居おさむを出してみよ
僕らの夏私らの夏消えて夏
松山東子さんとお別れ
その先の花野に行つてしまはれし
枯木星星の迷子を預かり中
すずき巴里(すずき・ぱり) 1942年、中国南昌市生まれ。
★閑話休題・・現代俳句協会幹事会「ロシアのウクライナへの侵攻についての声明」・・
現代俳句協会幹事会は、去る3月21日、質的には全く違うが、昭和36年の現代俳句協会からの分裂、俳人協会の創立の際に声明を発して以来2度目、60年ぶりの声明を出した。終日、リモートによる議論の末に決定したという。文中に「私たちはウクライナ、ロシアに俳句を通して多くの友人がおり、今後も絆を大切にしていきたい」とあるので、連絡のとれるウクライナ・ロシアの俳句愛好家の皆さんに直接文書メールなどで是非届けてほしいと思う。
ロシアのウクライナへの侵攻についての声明
ロシアによるウクライナへの侵攻は、ウクライナの主権と領土を侵害するものです。まして核戦力部隊の動員にまで言及したことは、人類として越えてはいけない一線に踏み込んでおり、強く非難します。
人びとの生命、財産が損なわれ、表現の自由や活動の自由が著しく阻害され、深刻な危機に瀕している現状を憂い、一刻も早く武力の行使が停止されることを切に求めます。
私たちはウクライナ、ロシアに俳句を通して多くの友人がおり、今後も絆を大切にしていきたいと思っています。すべての人びとが生命と生活の安全を保障され、不当な差別や迫害を受けることがないよう願ってやみません。
2022年3月21日
現代俳句協会幹事会
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