楉(すはえ)第20号(上智句会改め:すはえ句会句集)。発行人の根来久美子の「あとがき」に、
(前略)コロナ禍が一服していた十一月、久しぶりに対面句会を開き、今後のことを話し合いました。その席で、代表交代に伴う句会の名称変更の提案があり、新名称選定の作業に入りました。そもそも大輪先生が、上智の学生や卒業生を集めて始められた句会でしたから、「上智句会」という名前だったのです。(中略)泣く泣く諦めることになり、さらに議論を重ねて、最終的に「すはえ」と改名いたしました。
新しい句会名を句集名と同じ「楉」にしてはどうかとご提案下さったのは、大輪先生でした。「楉」ではなく「すはえ」となったのは、「楉」という漢字が環境依存文字であるため、メールのやり取りの際に文字化けしてしまう可能性があるからです。平仮名でしたら、そういう心配はありません。表記は「すはえ」ですが、発音は「すわえ」。「楉」と同じ読みです。
とあった。ともあれ、以下に一人一句を紹介しておこう。
寒鯉の動かざること只管打坐 大輪靖宏
ジョーカーの一句あたため初の句座 加藤房子
啓蟄や着信メール今日もなく 大島等閑
秋蟬や夏痩せの声かも知れず 有馬五浪
ひらひらと手話の指先花の昼 藤井綏子
一段と色のきはまる花曇 吉迫まありい
ふらここの高々と空平和なり 柳堀悦子
親ばかリ下向き歩く海雲取り 堀場啓司
寒の月いでて獣声統べるごと 伊藤 眠
着ぶくれを吐いては吸うて発車ベル 根来久美子
薄暗き切通しなる初音かな 平澤東山
羽化すれば夢の大空しじみ蝶 蝋山葉流美
出番くるまで船頭の片かげり 仲 栄司
初夢や手には届かぬ北極星 向瀬美音
おはじきにちよんと差し色秋の昼 山本ふぢな
銘々に魔法を秘めてチューリップ 井上泰至
蜃気楼うつつの鷗よぎりけり 纓片真王
餡パンの匂ふ銀座の雪もよひ 長谷川槙子
遠縁を訪ねて卯月曇かな 峯尾文世
触るるもの青に変へゆく梅雨の蝶 栗原和子
白梅の大空抜けて曲がりけり 高原沙織
合格の字踊る子の日記果つ 川口華織
雪の峰抱かむジェットコースター 岸本こずえ
呆気なく終はる会議や初時雨 成瀬靖子
終戦の日伝へることは学ぶこと 藻井友紀子
柚子浮きて馴染まぬ風呂の馴染みけり 松尾 哲
抜歯せし跡は筍飯で埋む 西苑実生
夜には夜の朝には朝の百千鳥 今尾江美子
臥して居て花瓶の春に凭れをり 鵜飼祐江
嘘つきの嘘に聞き惚れソーダ水 諸星千綾
撮影・鈴木純一「ねじのはな無窮は真か悪徳か」↑
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