「主流」650号(主流社)、その編集後記に、田中陽は記している。
安倍元首相の争議を「国葬」とすると政権が発表したとき、咄嗟に僕は少年時代の山本五十六元帥の国葬を想起した。あの時は戦争中で、国家権力が国民の総て(・・)を戦争のために強制した時代で、僕ら少年までもそれに同調したものだったが、今は民主憲法の下の国民主権の時代、負の要素を抱え込む元首相を国葬(全費用を国民の税金で賄う)にしてよいか否かは小学生でもわかる筈です。
と・・。特集は「広野草雄追悼」である「令和四年三月六日、老衰のため死去された。九三歳」とあった。追悼文は藤田踏青「土に根ざした作品群/広野草雄句集『雪柳』、川名つぎお「広野草雄が屹立ー句集『雪柳』を謝すー」、田旗光「親しみの山形、そして農」、伊藤眞一「生活者への讃歌」、荒木みゆき「広野草雄さねお悼む」である。その藤田踏青は、
もっこの土が重すぎてからすの言葉わからない
作句当時(昭和三〇年代)は社会性論議が盛んであり、そう言った意味でも「土」とは農民の血であり、「からすの言葉」とは高い処からの空虚な言葉と解しても良いのでは。つまりは身体から発せられた呻きのような句と考えられます。(中略)
仕舞の籾袋かつぎ 夕日の拍手
転作失敗 雉は一目散に逃げればいい
米作りやめたこと知らず機械ら眠っている
と記している。ともあれ、本誌より、一人一句を挙げておこう。
争いのない国はないか社会科教室の地球儀 金澤ひろあき
三日月が見えるそれだけのそれだけで 鈴木瑞穂
こすもすの揺れ休耕の田を埋める 神谷司郎
新藁濡らすまい にお積む父子の日暮れ 広野草雄
詮索するな鏡の俺に言い聞かす 田旗 光
余生とはまだいかぬ朝の味噌汁 植田次男
戦車を避けて避けて南瓜の蔓 鈴木和枝
そう言えば上皇様の誕生日 大須賀芳宏
夏空はじまる水の息 野谷真治
フェティシズム赤いポッチを押したがる とくぐいち
生きた日日翅に閉じてる秋の蝶 榎本有嵯微
マスクで口封じ戦争がやってくる 坂部秀樹
蔦兵士鉄条網を乗り越える 伊藤眞一
嬉しくも淋しくも咲く花を摘む 鈴木喜夫
空気ぬくとい エアコン付けても切っても 伊藤浩済
炎天へ波間を駆けるうさぎ達 萩山栄一
国葬や三輪明宏のヨイトマケ 田中 陽
撮影・中西ひろ美「姫の行く先に野葡萄蛇葡萄」↑
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