遺句集にして新句集・第18句集『天獄書』(金魚屋プレス日本版・定価:税込1800円)、その帯に、
安井浩司が生前最後にまとめた遺著で新句集(第18句集)。
最後まで前衛を貫いた安井俳句の金字塔! 全651句を収録
とある。他に同時に刊行された2著『安井浩司読本Ⅰ 安井浩司による安井浩司』、『安井浩司読本Ⅱ 諸氏百家による安井浩司論』(いずれも金魚屋プレス日本版・定価:税込各2000円)。本書内容については、九堂夜想がフェイスブックに挙げている画像を以下に添付しておこう。また読本Ⅰの帯、読本Ⅱの帯には以下の惹句がある。
私は俳句については門外漢だが、秋田前衛俳人、安井浩司氏を敬愛している。
「渚で鳴る巻貝有機質は死して)は俳句史に残る名句だろう。 辻原登
生涯に渡って徹底して俳句を文学として捉え続けた最後の前衛俳人・安井浩司。
難解で知られる安井俳句を99人の俳句精鋭が完全読解!
『天獄書』より、以下にいくつかの句を挙げておこう。
創世紀這い出で来たる蛇女 浩司
艦隊は帰らず崖の月見草
鷲巣忌の途(みち)無き天をひとすじに
想うまま火の中に活け曼珠沙華
ー女にー
祈るべきか過ぎ去るべきか風信子(ヒヤシンス)
浄土にも蛇を創りし古代びと
庭に来て冬青(そよご)嫌いの日雀ども
ー八十六歳女にー
恋人よ少し歩める金蓮歩
うぐいすに先ず散らしやる雪花菜(せっかさい)
生命線掌に握られて鬼あざみ
野良坊よ次の世紀にまた会わん
ー追悼・秀女毬子にー
逝く君の胸に供えん黒苺
草むらに撫でやる真忌(まいみ)の烏へび
天心はまた荒れはじむ月日貝
在るままに真人死せり如意菫
幾山河車輪自在の棺いずこ
遠虹を吊りおる天女首出して
母上が食えと命じる泥団子
衰えの身の脇に置く飛人形
有りや無し三草四木の野添小屋
鳥占(とりうら)の小森に忍び入るわらべ
野田べりの見えるふるさと餓死風(やませかぜ)
千の日を此の身に籠る蕁麻神
安井浩司(やすい・こうじ) 1936年~2022年1月14日、享年85.秋田県能代市生まれ。
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