2014年1月23日木曜日
『石神井書林目録』・・・
これまで、つとに聞き及んでいた詩歌専門の古書店・石神井書林について、
最近、ある人から送っていただいて、ことに楽しみにしている。
前号91号(2013・10)には永田耕衣・瀧口修造・土方巽と表紙にあった。
巻頭写真ページには、加藤郁乎宛の署名入りのものが、これでもかと言わんばかりに掲載されている。
素人の愚生にも、出所は、先般亡くなった加藤郁乎の蔵書であろうと推測できた。
永田耕衣、吉岡実、岡田隆彦、富澤赤黄男、髙柳重信、土方巽、中西夏之、飯島耕一、谷川晃一、澁澤龍彦、笠井叡、細江英公、種村季弘、白石かずこ、多田智満子、加藤周一等など、錚々たるメンバーに幅広い交遊が伺える貴重なものばかりだった。
愚生の友人のS氏などは、郁乎宛の署名がある知人の俳人のものは、あるいは、特に安く出されていたりすると、つい(他の古書店などでも目に付けば)買い求めているらしい(友情熱いというべきか)。
バブル以後、大衆化した俳人の多くの句集はやむなく売り払われているが、その際、「駄本一括」などと言われて値にならないものもあったり、狭い部屋には蔵書するというわけにもいかず、ゴメンナサイと詫びながら、始末をしているという現状だ。
某有名俳人の近くにあるブックオフなどには、句集がよく100円均一で並べられているという。もっとも、百円均一でも売れないものは処分される定めである。
愚生は20代の頃から、たまたま文献書院の山田昌男氏にお世話になっているが、生活に困ると、やむなく売っていた(最近の氏はご高齢になられたてはいるが元気で、まだ、まだ現役・・)。古本の値段が安くなって、買取もただ同然のようなこともあり気の毒であると嘆いておられる。
その頃は、献呈されたものではなく、なけなしの金をはたいて買った本だから、だれに遠慮することもない。今はとっくに無くなってしまった椎名誠の『国分寺書店のおばば』には、愚生もよく売りに行ったものだ。なにしろ、必ず定価の半額で買ってくれていたから、売る前から必要な額だけの本をもって店に行けばよかったのである。その代金は、生活費と旅行などに消えた(あるいは、別の本に化ける)。それだけ高い買取価格を続けていたのだから、店じまいになるのは仕方ない(その後は一時陶器店に変えて商売をしていた)のかも知れない。
話を元に戻して、石神井書林の話になるが、その店に愚生が興味を一段と魅かれたのは、出久根達郎のエッセイによる。「浮世離れの古本屋」として店主・内堀弘について「店はあるが、開けていない。通信販売をしている。客はハガキで注文を寄こす。長い取り引きをしながら、一度も見たことがないのである」と、そして、石神井書店の目録がいかに独特な店主の志であるかを述べたのちに「けれどもこの喧騒軽薄な現代に、尾形亀之助のような貧乏詩人を愛し、詩歌の本を嬉々として集め商う、著者のような奇特な古本屋がいるのだ。まだまだ日本は捨てたものではない」と・・・。
今日の残月↓
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