2014年8月19日火曜日
坂口昌弘『文人たちの俳句』・・・
収載された27名。必ずしもすべてが文人というわけではない。通俗的にいえば著名人というところか。このあたりの事情については、著者も「あとがきに」詳しく述べているところだ。
文人とは違うと言っても、これまで、ライバル〇〇VS××という対立的な構図で論を進める著作が評判であった坂口昌弘だが、さすがにそういういう描き方はしておらず、それぞれのエピソードを交えながら楽しめる読み物となっている。
興味ある御仁を読めばそれでもすむというのがいい。そうしたなかでは平塚らいてう(女性は実に太陽でった)、初代中村吉右衛門(弓もひくなり句も作る)、大久保橙青(今生にホ句浄土あり)、松本幸四郎(俳句は神からの贈り物)などには興味がひかれた。
天地のこヽにひらきし花火かな らいてう
炉びらきに弓も引くなり句も作る 吉右衛門
子規祀る虚子に仕へて生き残り 橙青
花吹雪つつまれゆきし人想ふ 幸四郎
打ち出して銀座は香る月の道 松たか子
ともあれ、集中の寺山修司〈目つむりいても吾を統(す)ぶ五月の鷹)〉については、かつての愚生もふくめ、いまでも若き俳人に多大の影響を与え、俳句を作る切っ掛けをもたらすなど、俳句史的にも特筆すべき俳人?であり、人気に到っては、いまだに現役俳人をしのぐほどである。
山鳩啼く祈りわれより母ながき 修司
麦一粒かがめば祈るごとき母よ
誰が為の祈りぞ紫雲英(れんげ)うつむける
その修司について坂口昌弘は「詩歌の旅に病んだ修司は、銀河の星の中に溺死して今輝いている」と書いている。
サルスベリ↑
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