岩崎喜美子句集『一粒の麦』(角川学芸出版)。装幀・田中淑恵。瀟洒で美しい句集である。
遺句集にして第三句集。夫君・岩崎正視が故人の遺志に添って上梓されたとのことだが、思わぬ急逝のことゆえ、残された原稿を「門」の仲間に託されたと「あとがき」にある。
従って、序句と帯の選句は「門」主宰の鈴木節子。跋の鳥居真里子によると、訃の届く2時間前、元気で「さよなら」と電話を切り、その電話での句が
「望郷や麦秋の波豊かなり」(喜美子)だったという。
句集名となった『一粒の麦』は岩崎喜美子の最初の師・能村登四郎にちなむ句による。
一粒の麦が穂となる登四郎忌 喜美子
以下に、いくつか、愚生の好みの句を挙げておこう。
鳥はひかり人は影曳き日脚伸ぶ
蒼天は天の表よ鶴の舞ふ
針山の中は我が髪久女の忌
笹鳴や山はしづかに水を産む
なやらひを昨日に山の薄目かな
晶子忌の夏風邪の身のおき処
老夫婦とは同志なりけり龍の玉
岩崎喜美子、1930年名古屋市生まれ、享年83.
ユスラウメ↑
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