2015年6月5日金曜日
高原耕治「蛇 起ちて/蛇山を見き//大西日」(『四獣門』)・・・
高原耕治が『虚神』(沖積舎)に続く第二句集『四獣門』(書肆未定)を十五年ぶりに刊行した。一貫して多行の俳句を書いてきた彼が発行人を務める同人誌「未定」はいまや多行俳句に特化した同人誌となっている。多行俳句を書く作家を有する同人誌は、ほかにも「鬣」「円錐」「LOTUS」「豈」などがあるが、多行形式の俳句のみを追究している同人誌は「未定」以外にはないだろう。
しかも、もし難解という評言を許されるなら、高原耕治の多行俳句は、他の多行俳句の作家たちに比べてもとりわけ難解である。たぶん、それは、「俳句の《存在学》的開放」という志向に加えて、作品そのもののに自動律を思わせる演劇的な身振りの調子が感じられるためかも知れない。
空(クウ)と零(ゼロ)と死霊などが繰り返される言語とともに、この第二句集が「《宇宙腦》に献ず」と掲げられていることからも、それらの事情の一端はうかがい知れよう。愚生には到底及ばない世界である。
とはいえ、先人たちの句業を契機として書かれたであろう句群もかなりあるので、それらの手がかりを獲られれば作品の起伏は以外にも愚生に微笑んでくれるときもあるのである。
例えば、
空(クウ)の空(クウ)なるかな
《宇宙開》
さざめき消ゆる
〈汝〉と〈我〉 耕治
この道が
死んで観てゐる
雲に鳥
金魚絶えたる
路地裏や
ががんぼどもの
似非故郷
以上の句などには、安井浩司、芭蕉、三橋敏雄、攝津幸彦などを即座に思い浮かべられるだろう。
いくつかの句を以下に記しておこう。四獣とは広辞苑に青竜・朱雀・玄武・白虎の四神とあった。
〈我〉てふ異名の
存在の
のれんたなびく
四獣門
嗚呼 未完の
《虚體》に
言霊の黥(すみ)
彫らむかな彫らむかな
われ〈われいろ〉なるか
雨
葱いろの
葱畠
タイサンボク↑
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