たなか廸子、1945年2月生まれ。1987年「童子」創刊維持会員とある。「童子」一筋の歩みというところか。栞文「多様な季語を生かす技」の安倍元気は、たなか廸子が使った季語の数の多さを述べながら、親愛を込めて以下のように記している。
古い季語を現代に生かして使うには、相当の技術が居る。作者はその力技を、やすやすとこなしているように見える。例えば〈新渋やつづらの角を念入りに〉の句だ。「新渋」を作ったり塗ったりする情景は、もう限られたところでしか目に出来ないが、この句では、柿渋のつづらという現に眼の前にあるモノを通して、抵抗なく詠まれている。仮にこれが展示の葛籠だったとしても、そこから新渋という季語に思い至るところが巧みだ。
第一句集『迪』(2000年・ふらんす堂)から15年の歳月を費やした著者の第二句集もふらんす堂刊、装丁は和兎。紫のクロスと金の箔押し文字の位置がシンプルながら魅力的だ。
以下にいくつかの句を挙げさせていただく。
出開帳津波のがれし秘とて 迪子
甘蔗(きび)
刈つて喉に古酒(くーす)
の熱きこと
春濤のたつふんときて夕ごころ
七輪に焚いて七日の煙かな
おとうとが先に逝くとは年の豆
芋の葉にすべなくすべり狐雨
水打つてあたりに翳の生まれけり
土になるまでを落葉として山に
種袋へたるを縛り上げにけり
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