昨年「狩」同人を辞して「若狭」を創刊した遠藤若狭男の現代俳句文庫81・『遠藤若狭男句集』(ふらんす堂)は全400句の選句集。解説に福島泰樹、伊藤伊那男、大牧広の再録。自身のエッセイに「塚本邦雄の『若狭男』」、「悲痛な魂の声」、「『若狭』創刊のことば」を再録収載している。
遠藤若狭男の軌跡をたどるには手ごろな一冊である。
愚生より一歳上の1947年福井県敦賀市うまれ。つまり若狭は彼の故郷である。というわけもあって「若狭」の地を詠んだ句も多い。とはいえ最後に置かれた句は、
生きる
人間の証明として枯野ゆく
座五「枯野ゆく」はなかなか切ない。
八月の海へ敬礼して父よ
踏み分けて行けぬところに初もみぢ
にぎやかな数とはならず初雀
われ去ればわれゐずなりぬ冬景色
などの句は捨てがたい。
ともあれ、若狭づくしの本集の中から「若狭」の地名入りの句を以下に記しておこう。
しぐるるや若狭のはての若狭富士
湖ありて若狭の国のさくら冷え
春惜しむ御目(おんめ)
を伏せて若狭仏
若狭路の風の薫らぬところなし
夕立のあとの若狭に帰り来し
若狭路や残菊にして色つくし
草の絮若狭恋しと飛びゆくか
若狭路のはづれにありし虫浄土
若狭路の鴉を落穂拾ひかと
立秋や船より仰ぐ若狭富士
航跡のあざやか若狭湾の秋
沙羅咲いていちにち雨の若狭かな
海を見に春の若狭へ帰りたし
若狭なつかしめばすいと夕螢
フヨウ↑
0 件のコメント:
コメントを投稿