岡田恵子の第四句集『緑の時間』(山河叢書27)、懇切な跋「蜜柑味の清少納言」は安西篤。
岡田作品を筆者なりに一言で評するならば、〈蜜柑味の清少納言〉とでも言おうか。知的できびきびした感性は清少納言そのものだが、決してクールな固さではなく、すこし日向くさい親しみも感じられる。レモン型というより蜜柑型の感性なのだ。(中略)
「蜜柑味の清少納言」と評したのは、『枕草子』のような日常の断片が、意外に他者との相対関係の中で触発され、自身の社会意識の中にも位置づけられているようにも思えたからだ。
著者はある頃から五年に一度句をまとめてみようと思うようになったという。その計画性が第四句集として結実しているのだ。その「あとがき」に、
振り返れば第三句集は東日本大震災の年に発行した。後書に私は、日本は持続可能な社会に舵を切ったと書いた。あれから五年、事故を起こした原発の処理は遅々として進まない中、いくつかの原発は再稼働を始めた。加えてさまざまな国の思惑と行動はテロに怯える社会に導いた。来る五年後は希望の持てる社会になっていてほしいと祈るばかりである。
と記されている。ともあれ、以下にいくつかの句を挙げておこう。
水音の半音上がる初明り 恵子
山のように生きる空海苔の花
憲法に生死の道や田草取る
南吹くどこか戦車の匂いして
目覚めれば武器を売る国紀元節
国境をつなぐ大河や若葉風
触れ合うは傷の始まり紅椿
晩夏光死ねない原発立ち尽くす
名月や鳥居半分消えており
岡田恵子(おかだ・けいこ)、」1954年香川県生まれ。
0 件のコメント:
コメントを投稿