丸喜久枝第二句集『青鷹』(書肆麒麟・300部限定,私家版)、装幀は河口聖。句集名は次の句に因む。
ゆつたりと神の高さに青鷹 喜久枝
青鷹は諸回り(もろがえり)と読み、生後3年を経た鷹のこと。俳人の好きな難読季語のひとつだろう。
磯貝碧蹄館に師事し「握手」同人を経て、現在「円錐」同人。従って句歴も長く句姿のしっかりした句を書かれている。また、くり返し父母のことを詠まれている。
グァム島の熱砂ぞ父の戦死の地
父の日や風過ぐ天に父の声
父散華以後の月日や花菫
父祖に買ふ地酒二本や寒桜
母の手の大きく厚し麦の秋
菜の花や母の野良着の盲縞
長命の母に好みの菊膾
初時雨気弱くなりし母を訪ふ
腰痛は母似にあらず鵙猛る
一生を農に母老ゆ秋の風
蓑虫の繕ひ母の居らざりし
幾千の蟬に鳴かれて母逝きぬ
無花果や母の形見を着ず捨てず
葉桜やどこへも行かぬ母笑まふ
身に入むや母の形見の帯を締め
多くの句を抜くことになったが、以下には、愚生好みの他の句をいくつか挙げよう。
峡の田を植ゑて生涯とどまれり
烏瓜引けば女人のふところへ
寒菊の気勢ととのふ朝茜
藤の袈裟かけて微笑む磨崖仏
石臼を捨てず使はず春埃
丸喜久枝(まる・きくえ)1935年生まれ。
0 件のコメント:
コメントを投稿