『小町圭選集』(ふらんす堂・本体1800円)、仕様は現代俳句文庫と同様だが(本集の装丁は和兎)、エッセイ・論・主要句を収載した個人選集として、その作家の大方を知るには、格好のテキストになるだろう。
解説の中で、「
面白い俳句という地平を開いた」という前田吐実男の評について、村井和一は、
小町圭の方法的実験を不毛とする向きもあるだろう。俳句がたえず正統であり続けることの退屈を作者は知ってしまったのだ。
と述べている。その「正統であり続ける退屈」とは、なんでもありの写生、とりわけ有季定型、花鳥諷詠の、いわゆる俳句の王道のことであろう。その王道からの逸脱をこそ前田吐実男は「面白い俳句という地平」と評したのだ。いずれにして、現代俳句という、現在的な俳句の世界においては、かなり難しい道行であることは疑い得ない。それでも、今後も小町圭はこだわって前に進もうとするにちがいない。
ともあれ、いくつかの句を以下に挙げておこう。
苦瓜を食べてしまうましまうまし 圭
雪女お尻にプラと書いてある
みかん金色持って行きなと手に落ちぬ
一億円金魚を作ろうと思う
とりとめもなくあれはせきれい
産声や降る雪よりも新しい
汚れちまった八月を影干しに
夕焼けや只今父は湯灌中
呉れるなら母が欲しいと生御霊
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