2017年7月2日日曜日
櫂未知子「掛香や私雨(わたくしあめ)の脚見えて」(『カムイ』)・・
櫂未知子第3句集『カムイ』(ふらんす堂)、著者「あとがき」には、
この句集の『カムイ』という名は、いささか大げさに響くのだろうか。
しかし、北海道余市市の実家から車でそれほどかからない場所にある神威(かむい)岬の、あらゆる人間を拒むような壮麗なたたずまいを、いつか句集タイトルにしたいと私はずっと願ってきた。
と記し、かつ収録句のなかには、
洗ひ髪神威岬(かむいみさき)に吹かれつつ
もある。句集から受ける印象では、さきの『貴族』、『蒙古斑』の二句集よりもはるかに、立ち姿の美しい句が多い。
櫂未知子に会ったのは、現代俳句協会の青年部委員の時代であった。今では遠い昔のことだが、北海道旭川での青年部主催のシンポジウムでは一緒だったことを思い出す。
何よりも現代俳句協会の創立50周年記念事業の一つとして現代俳句協会青年部論作集『21世紀俳句ガイダンス』では、愚生はその編集後記に今は亡き須藤徹とともに、以下のように記した(当時、夏石番矢青年部長はパリに留学中だった)。
この他にも「青年部通信」を継続して発行するなど、青年部有志の費やしたエネルギーは計り知れないものがある。それも、これも、ひとえに俳句に対する情熱のなせるわざであったろう。扉裏にそれらスタッフを紹介して、尽力に感謝したいと思う。とりわけ、校正においては、櫂未知子の全面的協力を得た。
今でもその尽力に感謝している。その櫂未知子の俳句に対する情熱の結実を本句集にみるのは、たぶん愚生のみではないだろう。
ともあれ、以下にいくつかの句を挙げておこう。
水占(みづうら)の水うしなはれ敗戦忌 未知子
箱庭に軍隊置いてある夕べ
闇の数すなはち猫の恋の数
水やれば咲くかもしれずかたつむり
風船を手放す自由ありにけり
巨船まだ白し憲法記念の日
一瞬にしてみな遺品雲の峰
両親の遺髪の揃ふ野分かな
月光を居間に通してくれますか
櫂未知子(かい・みちこ) 1960年、北海道生まれ。
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