2017年7月12日水曜日
中原幸子「せつせつとスパナを磨き桜むの」(『ローマの釘』)・・
中原幸子俳句とエッセ―『ローマの釘』(創風社)、坪内稔典の帯文の惹句には、
中原幸子さんは勉強が楽しくてたまらない。大学院に籍を置いて「日本文化の取り合わせ」を研究する学究なのだが、すごい勉強好き、勉強オタクと言いたいくらいの79歳なのだ。その勉強オタクぶりを読者にも楽しんで欲しいのがこの本である。
とある。愚生の印象では、愚生より3,4歳年上の姉貴ぐらいの歳かな、と思っていたら、愚生よりちょうど十歳上の長女らしい。失礼だが、その年齢を愚生と引き比べれば、文章ははるかに若々しく、学究の徒の名にふさわしく、文中に出てくる数字や、例などが極めて具体的で、自ずと文章には充分な説得力があり、かつ話のオチをユーモラスにつけてくれている。
ブログタイトルに挙げた「せつせつとスパナを磨き桜むの」には、以下のエッセーが付されている。
「船団」92号の特集は「俳句と動詞」だった。金田一秀穂氏をお招きして公開座談会が行われ、とうとう「動詞を作ろう」という話になった。すぐその気になって作ったのがこの物騒な句である。ほかに「桜んでイスタンプールまでちょっと」、「かっこいいなあ桜むを突き放し」などもできた。
「机る」という意味不明の動詞も作った。「机ろうプリーズハブサム若葉風」。
こうして人を楽しませるなどということは、愚生にはとうていできない芸当だが、それだけ面白い。ともあれ、集中の幾つかの句を以下に挙げておこう。
行く春の息つめてから鳴る電話 幸子
鯉幟兜太の尿瓶澄みわたる
ほらごらん猛暑日なんて作るから
休戦ライン真赤に冬の地図
満場ノ悪党諸君、月ガ出タ
中原幸子(なかはら・さちこ)1938年、和歌山県生まれ。
撮影・葛城綾呂 コルチカム↑
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