2017年10月5日木曜日
とくぐいち「裏山に鳥の身投げは続きけり」(『おじゃまむし』)・・
とくぐいち俳句集『おじゃまむし』(私家版)には、二冊の句集が入集されている。ひとつは当人の『おじゃまむし』400句、あと一つは、彼の友人だった八田春木遺句集300句である。
著者「あとがき」に、
この句集は二〇〇九年六月から二〇一七年二月まで『蕙』『鶏鳴』『ロマネコンティ俳句ソシエテ』『面』等の俳誌に発表したものを中心に選んだ。慣例的には、敬愛する俳人に選句を願い、解説等を書いていただくところだが、無季俳句孤軍奮闘中でもあり自選とした。また、『八田春木遺句集』を付録としたが、それは俳句にあって因縁浅からぬ、今は亡き友人八田春木の作品を収録しておきたかったからである。
と記されている。無季俳句とはいえ、俳句は、言いおおせて何かある・・のであり、言いおおせるのが川柳ならば、とくぐいちの句は、やはり川柳的なのである。無季俳句も川柳も同じく五・七・五のみで立つ形式である。いずれにしても、その道は、ともに遥かである。「面」に所属とあったので、そこには見事な書き手である高橋龍がおり、無季俳句といえども、掌中のものである。せっかくの具現の士が近くにおられるだから、教えを請われるのが近道ではなかろうか。とはいえ、この困難な道を進もうとする、とくぐいちの奮闘に敬意を表したい。
ともあれ、彼の句と、そして、俳句としては、よく完成されている八田春木の句をいくつか以下に挙げておきたい。
年表の余白に兵が横たわる とくぐいち
身をひたす闇が縮んでしまいけり
もういいと白菜煮えてしまいけり
こんにゃくは時を盗んで煮えてゆく
言訳のかわく舌の根蟻地獄
「様」つけるほど上等か「世間」は
ひっそりとしている円の中心部
戦争にたてる爪なし季語二万
少しだけ温もる水を吐く海月 八田春木
白玉は水の深きへ変声期
かなかなの声ふたとほり父娘
春の闇乾ききらない手を使ふ
霧の海死刑執行報じをり
炎天下魚眼レンズの中の街
少年を囮に入れて五十年
死神も同席したる雪見酒
とくぐいち、1947年山梨県生まれ。水戸市在住。
つるし雲 撮影・葛城綾呂↑
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