石井俊子第2句集『虹の橋』(東京四季出版)、集名は、
言の葉の優しき人や虹の橋
の句に因むと思われる。懇切な序は鹿又英一、序によると職場の上司と部下であったらしいが、実に優秀な部下(石井俊子)のお蔭て郵便局長の激務をこなすことが出来たと感謝が記されている。しかし、その部下と上司が俳人として初めて出合うのは数年後の俳句の席である。そうした縁こそが大事だと鹿又英一はいう。また、親愛の跋は佐藤久、その跋には、、
石井さんの句には、作者の生身の息遣いが感じられます。全てが実景句であり、実感句なのでしょう。飾らず虚勢もなく心のままに詠むことは、実際には大変難しいことですが、石井さんはこの壁を軽々と越えているように感じます。それゆえ石井さんの俳句は様々な顔を持っているのでしょう。それは複雑で矛盾した生身の人間として生きていることの有り様そのものです。
とある。あるいはまた、著者「あとがき」には、平成28年1月「蛮の会」に、縁あって入会し、
理想の師、若い熱心な句座の皆さんに恵まれて、きびしさと恩情の句会に無我夢中でついていきました。それもつかの間の平安、四月に癌のリンパへの転移がみつかり、急ぎ、上梓の実現を目指し、二十七年春から二十九年春までの二年間の作品四百句あまりを収めました。
と、本集の上梓への経過と思いが語られている。
ともあれ、今後の健吟を祈って以下にいくつかの句を挙げておこう。
雛飾り父母の遺影を拭ひたる 俊子
手の平の幅の川なる花筏
米軍の基地も氏子や本祭
寄り添いし影のもつるる蛍の夜
谷崎を読みて寝落ちの昼寝かな
福も鬼も一人二役豆を撒く
病廊の迷路めきたり春隣
石井俊子(いしい・としこ)昭和20年、神奈川県生まれ。装幀は田中淑恵。
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