2017年11月9日木曜日
橋口等「宇宙巡礼星星をして祈らしめ」(『建立 橋口等全句集』)・・
橋口等『建立 橋口等全句集』(諷詠社)、「鈴木石夫の御霊に捧ぐ」の献辞がある。跋によると、
本書は、既刊第一句集『透明部落』(一九九一年 黙遥社刊)、既刊第二句集『こすもすごろす』(二〇〇一年、青木印刷)に、新たに、未刊の、第三句集『徳魂』、第四句集『鶴恋暮』、第五句集『宇宙遊弋』を加え、『建立 橋口等全句集』として仕立て上げ、江湖に問うものである。
と記されている。略歴によると1972年「歯車」(鈴木石夫代表)に参加とあるので、おそらく橋口等が16歳のときであろう。当時「歯車」は、10代や20代の若い俳人たちの拠点の同人誌だった。現在の代表は前田弘に継がれているが、編集の大久保史彦はその頃から不動の編集長である。江湖に問う志は、鈴木石夫が現代俳句の革新に賭けたものと同根だろう。その鈴木石夫は11年前に80歳で亡くなっている。
本句集の中の特徴は第三句集の「徳魂(とくこん)」など、造語による連作ではなかろうか。不昧な愚生にはその「徳魂」がよく分からない。しかし、著者にとっては大事なキーワードである。第四句集の「鶴恋暮」もそうである。恋があるから恋慕となれば分かり易いが、その道は避けているのだ。最後の「宇宙遊弋」に至っては「宇宙山脈」「宇宙大陸」「宇宙渓谷」「宇宙鉄道」「宇宙都市」「宇宙婚礼」「宇宙大祭」「宇宙大葬」「宇宙漂流」「宇宙遍路」「宇宙巡礼」の句群である。造語とは、新しい概念を創出するために創造される言葉である。つまり、作者は造語によって、既存の世界ではない別の新しい世界を創造しようとしているのである。果たしてこれが現在の状況下に、受け入れられるか、そうでないか、文字通り、橋口等は江湖に問うているのである。
ともあれ、以下にいくつかの句を挙げておこう。
蒼蒼と湖底の少女火を焚けり 『透明部落』
今を走る馬とは遂に出逢はざりけり
山脈ヲ星脈と呼ぶ銀河すくーる 『こすもろごす』
幼年を断固支持せよ蟻の道 『徳魂』
潮干狩天も無数の目をひらき
飛魚の飛翔哄笑の波がしら 『鶴恋暮』
かぐはしや幼年棕櫚の花一番星
たましいをともしびとなし宇宙遍路 『宇宙遊弋』
宇宙遍路ねぐらは白鳥座の影か
橋口等(はしぐち・ひとし)1956年、鹿児島県出水市生まれ。
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