2018年3月15日木曜日
出口善子「国蝶に頭上を譲り誕生日」(「六曜」NO.50)・・
「六曜」(「六曜の会」代表・出口善子)第50号、「編集後記」に、
本号は、二〇〇五年八月に創刊して後、ちょうど五十号に当たります。記念号企画として「五十号史」を記し、仲間の今までの歩みを振り返りました。また、「自分のベスト十句」を募集しました。
とある。モットーは「志は高く、句作は楽しく」であるという。50号史の歩みとはそのまま彼らの師(没後の弟子を含めても)・鈴木六林男を失ってから13年を閲したことになる。光陰矢の如しである。六林男といえば、「おちょこでビールを飲むと酔うんだよ・・」と言っていたことと、高柳重信の「俳句研究」編集後記集『俳句の海で』(ワイズ出版)の帯文を頼んだことを思い出す。そしてまた、何かの六林男のお祝いの会の御礼で毛布をいただいて、我が家では今も「六林男の毛布」といって愛用している。
本誌の六林男に関する連載では、神田ししとう「六林男この句」(2)が「祖国の雨」と題して、出征時の句として、
どしやぶりの祖国の雨に濡れてゆく 六林男
父の顔歓送群の中に濡れ
を挙げ鑑賞している。
ともあれ、記念の「私のベスト10句」から一人一句を以下に紹介しておきたい。
たまねぎのまるまる思春期の不機嫌 有田美香
手拭いを絞るちからで今日終る 石川日出子
製氷器こわれて朝のがらんどう 岩男 進
九条の碑のある寺の桜かな 大門嗣二
北窓を開け柔らかな耳でいる 大城戸ハルミ
七日正月明けて鬼籍に入りにけり 岡本 匡
どうせなら呆れるほどに四月馬鹿 角本美帆
残月を行きし人あり春の泥 神田ししとう
守られぬ約束も乗せ花筏 喜多より子
日本国道路元票に花と着き 絹笠紀子
百歳は農に遊ぶや桃の花 桑代サダ子
ふるさとは母が真ん中春キャベツ 佐藤富美子
逆縁を生きたる父に熱き燗 芝野和子
主義曲げぬまま生きたし竹の春 田中晴子
容よき少女の乳房新玉葱 谷 千重
百面相一つ取り出し初鏡 玉石宗夫
着膨れてなかなか取り出せない言葉 出口善子
老犬の孤独満月頒かちやる 富川光枝
地下書庫に探す初版やつづれさせ 永井美智子
宅配の荷物の隅を栗で詰め 成山幸子
死のにほひ白く放ちぬクチナシは 羽賀一惠
鯉の背の赤をつぎ足す照り葉かな 花輪朋子
天上に増えて昭和の戦傷(きず)の痕 望月至高
蜜豆によもやあれほど喋るとは 安井博子
道問えばハナナスに風オホーツク 山内 一
鬼の子にひだるき口に銀の糸 横山崩月
あと一滴コップの怒り溢れ出す 吉村由美子
日傘ごと日陰に入る梅雨晴れ間 鷲尾規佐子
花冷えの書肆の平積み膝で押す 綿原芳美
撮影・葛城綾呂 ホトケノザ↑
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